文春文庫、今月の新刊の中に、小林信彦さんの『森繁さんの長い影 本音を申せば?』を発見。
週刊文春の連載エッセイ「本音を申せば」の2009年分だ。
毎年、1年が過ぎると単行本になり、やがて文庫になる。
連載時に読み、単行本で読み、こうしてまた文庫本でも読む。
私にとって小林さんのエッセイは「社会の窓」であり、「教科書」であり、一つの「指標」であったりする。
それに、時間を置いて読むことで、以前は気づかなかった“再発見”があったりして、面白いのだ。
たとえば、09年7月2日の<「おれがラジオだ!」と叫んだ男>。
実はこれ、大竹まことさんの話だ。
文化放送の自分の番組「大竹まことゴールデンラジオ!」で、何かにかっとなった大竹さんが、そう叫んだらしい。
小林さんは、テレビを見ない。そしてラジオを聴く人だ。
そんな小林さんが書く。
「そうだ、いま<ミスター・ラジオ>といえるのは、大竹さん以外に何人もいないのだ、とぼくは思った」
その大竹さんと今、BSジャパンの番組「大竹まことの金曜オトナイト」でご一緒している。
小林さんがこの文章を書き、私がそれを読んでいた2009年当時は思いもしなかったことだ。
だから人生は面白い。
ってのは少しオーバーですが(笑)。
今週の「読んで、書評を書いた本」は、以下の通りです。
薬丸 岳 『友罪』 集英社
藤野眞功 『アムステルダムの笛吹き』 中央公論新社
関川夏央 『昭和三十年代演習』 岩波書店
ミシマ社:編 『自由が丘の贈り物』 ミシマ社
金平茂紀 『沖縄ワジワジー通信』 七つ森書館
柳田邦男 『言葉が立ち上がる時』 平凡社
和合亮一 『廃炉詩篇』 思潮社
* 書いた書評は、
発売中の『週刊新潮』(7月25日号特大号)
読書欄に掲載されています。