日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHKドラマ10「コントレール~罪と恋~」を取り上げました。
NHKドラマ10「コントレール~罪と恋~」
“ひこうき雲”から目が離せない
今期ドラマは序盤戦の真っ最中だが、見逃してはならない1本がある。石田ゆり子主演「コントレール~罪と恋~」だ。
通り魔事件に巻き込まれて亡くなった夫。残された妻(石田)は夫に愛人がいたことを知る。事件現場に居合わせた弁護士(井浦新)は犯人と揉み合い、結果的に石田の夫を殺してしまう。井浦はショックで声が出なくなり、弁護士を辞めてトラック運転手となった。
6年後、街道沿いで食堂を営む石田は、客として来た井浦に魅かれる。だが、その素性は知らない。井浦は自分が殺めた男の妻だと分かるが、石田へと傾斜していく。しかも、かつて事件を担当した刑事(原田泰造)も石田に思いを寄せている。さて、3人の運命は・・。
石田が演じる45歳の未亡人が何ともセクシーだ。幼い息子の母親としての自分と、一人の女性としての自分。その葛藤に揺れながらも衝動を抑えきれない。鏡の前で、久しぶりにルージュを手にする石田の表情が絶品だ。
井浦にとっても、会ってはならない女性との危うい恋愛だ。失声症だった井浦が、ベッドの上で石田の名を呼べた時の戸惑いと喜び。その心情の複雑さも、脚本の大石静がきっちり描いている。
大人の女性のココロとカラダが、今後どう動くのか。鮮やな軌跡を見せ、やがて消えていくコントレール(ひこうき雲)から、しばし目が離せない。
(日刊ゲンダイ 2016.04.26)