週刊新潮で、「秋ドラマ」についてコメントしました。
「石原さとみ」を「米倉涼子」が踏みつける
「秋ドラマ」視聴率戦争
視聴率3冠を目前にした絶対王者・日テレに最強の刺客が襲い掛かろうとしている。テレ朝は美人外科医に警視庁のはぐれコンビという盤石の布陣を揃え、TBSも大物女優を惜しげもなく投入。秋の夜長を騒々しくする連ドラ“視聴率戦争”の火蓋が切られた――。
各局の秋ドラマがほぼ出揃ったことで、“視聴率戦争”は今まさに天王山を迎えようとしている。
スポーツ紙のベテラン芸能記者によれば、
「民放各局にとって、10月改編から年末にかけての最大の関心事は年間平均視聴率に尽きる。なかでも今年は、日テレが3年連続で“視聴率3冠”の座を死守するかが焦点となっています」
3冠とは、ゴールデンタイム(午後7時〜10時)、プライムタイム(午後7時〜11時)、そして全日(午前6時〜翌午前0時)の3つの時間帯で、トップの視聴率を叩き出すことを意味する。
その効果は営業面でも絶大で、CM収入が年間100億円近く増えるとまで囁かれる。
昨年のゴールデンタイムは日テレが12・6%で首位。その後にテレ朝の11・0%、TBSの9・8%が続き、04年から7年連続3冠に輝いたフジは、9・2%で4位に沈んでいる。
今年の上半期も好調を維持する日テレだが、実は、現在まで続く快進撃を決定づけたのは、他ならぬ“秋ドラマ”だった。
「日テレは11年にフジの牙城を崩して3冠を手にしました。原動力となったのは、最終回で40%という驚異的な視聴率を記録した『家政婦のミタ』です。10月スタートのこのドラマは尻上がりに調子を上げ、年末ギリギリになってフジを僅差で逆転したのです」(同)
だが、かつて日テレに神風をもたらした秋ドラマは、ここにきて、3連覇を阻む逆風となって猛威を振るい始めたのである。
■テレ朝の独壇場
戦々恐々としているのは日テレ関係者だ。
「目下、年間視聴率でテレ朝に猛追されているのは間違いありません。サッカーW杯のアジア最終予選の放映権を独占していることも大きい。2時間枠で20%前後の視聴率が期待できますからね。ただ、それ以上に脅威なのは、秋ドラマに大本命の3作品をぶつけてきたことです」
テレ朝が満を持して送り出したのは、視聴率でも“失敗しない”看板ドラマ「ドクターX」に、来年2月には新作映画の公開を控える「相棒」。そして、シリーズ16作目を迎える「科捜研の女」だ。
その布陣には、上智大学の碓井広義教授(メディア論)も太鼓判を押す。
「今年の秋ドラマはテレ朝の独壇場でしょう。とりわけ、『ドクターX』は米倉涼子の座長芝居が堂に入っている。見せ場の手術シーンも外連味たっぷりの芝居で飽きさせません。また、敵役の病院副院長に泉ピン子さんを起用したのも大正解でした。シリーズ物で新たな視聴者を獲得しようとすると、若年層をターゲットにしがちです。ただ、今作では泉さんを登場させることで、固定客より年上の層を狙った。好スタートを切ったのも、この戦略が功を奏したからだと思います」
芸能デスクもこの高評価に異存はない。
「米倉は、いま最も視聴率を稼げる女優です。主婦層を中心に女性からの人気が絶大なので、日中の再放送でも数字が見込めます。今回、テレ朝は1本500万円という破格の出演料でオファーしたそうですが、それでも十分に元が取れる」
結果、「ドクターX」の初回は20・4%と、今年の民放の連ドラで最高の視聴率をマーク。ちなみに「相棒」の初回は15・5%だったが、
「業界関係者の間では、“過去の実績と比べて物足りない”という声も上がった。ただ、新作のほとんどがひとケタ台に喘ぐ他局からすれば、うらやまし過ぎる数字です」(同)
■放送事故寸前
テレ朝の盤石ぶりが目を引く一方、日テレに一矢報いようと必死なのは“ドラマのTBS”も同じだ。
初回が「相棒」に次ぐ13・1%だった、織田裕二主演の「IQ246」は、高い知能指数を誇る貴族の末裔が難事件を解決に導くというストーリーである。
とはいえ、アラフィフの織田が、妙に鼻にかかる声で変わり者のボンボンを演じる姿には、失笑を禁じ得ないとの声も。
コラムニストの林操氏は、
「あのキャラクターは放送事故寸前でしたね。今回のドラマを機に織田を笑い者にしていいことになったんだな、と感じました。本人は大真面目なのでコメディではありませんが、大した伏線はないので本格的なミステリーとも言えない」
だが、前出の日テレ関係者は警戒を緩めない。
「9年ぶりにTBSの連ドラに主演する織田に加え、NHKの朝ドラで大ブレイクした土屋太鳳とディーン・フジオカというキャスティングからは、局の本気度が窺える。『古畑任三郎』と『リーガルハイ』を足して2で割ったようなドラマですが、豪華な出演陣に惹かれて観てしまう視聴者は多いと思います」
■大物起用のTBS
さらにTBSは、刺客として新垣結衣を放つ。
先の芸能記者によれば、
「少女漫画が原作の『逃げるは恥だが役に立つ』は完全な“新垣枠”。独身サラリーマンと契約結婚する、大学院卒ながら職ナシのヒロインを演じています。昨年、彼女が主演した『掟上今日子の備忘録』は、ライトノベルが原作で脚本家は今回と一緒。新垣とポップなストーリーの組み合わせには一定数の男性ファンがついていて、初回も10・2%とまずまずの好発進でした」
TBSの大物起用はこれだけではない。
トドメは菅野美穂が第1子出産後、初めて主演した連ドラ「砂の塔」である。家族で憧れのタワーマンションに越してきた主婦という役どころで、松嶋菜々子が脇を固めることも話題となっている。
「菅野は『あさチャン!』や『ビビット』といった情報番組だけでなく、バラエティ番組の『モニタリング』や『オールスター感謝祭』にまで出演するなど、番宣に余念がありません。NHKの『あさイチ』に登場した際には、これまで口を閉ざしてきたヌード写真集についても触れるサービスぶり。ただ、初回の視聴率は9・8%でわずかに2ケタには届かなかった」(同)
前評判はともかく、内容には少々難ありで、タワマンの何階に住むかでヒエラルキーが決まるという設定もあまりに紋切型。EXILEの岩田剛典が菅野を抱きかかえるシーンで唐突にスローモーションになる辺りは、ひと昔前の韓流ドラマのようだ。もっとも、TBSが菅野を主演させた背景には、“打倒日テレ”以外の皮算用もあって、
「TBSの宿願は『半沢直樹』の続編を制作すること。菅野に復帰の場を用意して、堺雅人に恩を売りたいのでしょう。目当ての俳優を口説くために、親族や同じ事務所の役者をバーターに使うことは珍しくありません」(芸能プロ関係者)
もし実現すれば、その恩恵は“倍返し”どころではあるまい。「半沢直樹2」の影は、来年以降も日テレを脅かすことになる。
(週刊新潮 2016年10月27日号)