「うーん、上手いなあ」と思わずつぶやいてしまいました。といっても、現在放送中のドラマ『陸王』で見せている、達者な演技のことじゃありません。
阿川佐和子さんの『あんな作家 こんな作家 どんな作家』(ちくま文庫)です。
名だたる作家にインタビューして、エッセイ風の文章にまとめる。これって実は、なかなか難しい仕事ですよね。
読者って欲張りですから、作家の「人となり」と作品についてはもちろん、過去から現在(書いた時点での)までの軌跡や、「ここだけの話」も欲しがる。それを短い文章で、それも読ませる文章で仕上げるのですから。
ベースにあるのは、相手を構えさせず、媚びず、また慇懃にならずという、やっぱり阿川さんの「聞く力」だと思います。
単行本が講談社から出たのは1992年。60名近い作家が並んでいますが、四半世紀が過ぎた今、こうして文庫本で読むと、亡くなった方々も多い。松本清張、吉村昭、森瑤子、吉行淳之介、遠藤周作、井上ひさし、そして山口洋子も・・・・。
でも、この本の中では阿川さんのペンによって、実在しています。人物像も、肉声も、ここにある。ありがたくて、ちょっと不思議な感じです。
ところで、ってのもヘンですが、この本のタイトルは、童謡『汽車ぽっぽ』の歌詞「なんだ坂、こんな坂、なんだ坂、こんな坂」からきた、阿川さんお得意の駄ジャレだってことは、世間にちゃんと通じているのでしょうか(笑)。
確か、この『汽車ぽっぽ』を作詞・作曲した本居長世は、国学者・本居宣長の、直系じゃないけど子孫だったはず。余談ではありますが。