「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
群ようこ 『かるい生活』
朝日新聞出版 1404円
「本の雑誌」で働いていた木原ひろみ嬢が、ふと気づいたら作家・群ようこになっていた。あれから30年以上が過ぎ、著者も「物をかるく」「しがらみをかるく」と志向する年代となった。とはいえ、増える本をめぐる悩みは続いており、同病の読者には参考になる。
大林宣彦
『大林宣彦の映画は歴史、
映画はジャーナリズム。』
七つ森書館 1944円
5つの対談・座談会が収められている。「過去の記憶と現在を対話させると未来が見える」と川本三郎に語り、「映画は、風化しないジャーナリズムです」と常盤貴子に伝える大林監督。肺がんで余命3カ月と宣告された後に、一雄原作の『花筐(はながたみ)』を完成させた。
大竹 聡:著、矢吹申彦:イラスト
『新幹線各駅停車 こだま酒場紀行』
ウエッジ 1404円
新幹線「こだま号」に乗り、駅ごとに下車して、酒場で飲む。始発の東京駅から終点の博多駅まで全35駅のコンプリートだ。何と罰当たりで幸福な旅だろう。行く先々で季節の地魚と地酒。店の人との淡い会話も極上の肴だ。大人の男なら一度は試してみたくなる。
東良美季 『デリヘルドライバー』
駒草出版 1620円
自宅やホテルにいる客に性的サービスを届けるデリバリーヘルス。ドライバーは派遣される風俗嬢の送迎を行う。ホストからヤクザまで前職は様々だ。「売れる女の子ほど心を病むんです」と語る男たち自身が、「最後の砦」と呼ばれるディープな現場に生きている。
藤波 匠 『「北の国から」で読む日本社会』
日本経済新聞出版社 918円
1981年に始まり、約20年にわたって放送された国民的ドラマ「北の国から」。富良野で暮す登場人物たちの生活を通じて、社会の変容を解読しようとする試みだ。特に田中邦衛が演じた黒板五郎には、脚本を書いた倉本聰の思想と実践が色濃く反映されている。
(週刊新潮 2018年1月25日号)