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Channel: 碓井広義ブログ
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書評した本: 後藤広喜 『「少年ジャンプ」 黄金のキセキ』ほか

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週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


後藤広喜 『「少年ジャンプ」 黄金のキセキ』
ホーム社 1728円

今年、「週刊少年ジャンプ」(以下「ジャンプ」)は創刊50周年を迎える。元編集長である著者が、新入社員として「ジャンプ」編集部に配属されたのは創刊から2年後の1970年。発行部数はすでに100万部を超えていた。編集長に就任した86年が450万部。退任翌年の94年には653万部の最高記録に達した。

そんな「ジャンプ」の歴史を、どんな漫画家がどのような作品を描いてきたのかという、最も興味深い視点でたどっていくのが本書だ。おかげで回想記を超えた漫画家論、漫画作品論、そして漫画創作技術論になっている。たとえば、創刊当時はギャグ漫画が主流だった「ジャンプ」に革命を起こしたのは本宮ひろ志『男一匹ガキ大将』だ。キーワードは暴力、金力、権力の3つ。著者はアクションシーンの構図や感動シーンの演出などを通じて魅力を解説する。

また鳥山明『DRAGON BALL』の面白さの要因はキャラクターの造形と描写であり、人間関係も物語展開もシンプルであることだと指摘。それは言葉よりも「映像の連続で考える」鳥山の姿勢から来ていた。さらにスポーツ漫画の金字塔、井上雄彦(たけひこ)の『SLAM DUNK』。ワンシーンの細部に宿るキャラクター像が見事だが、それを支えているのは井上の図抜けた画力だという。

本書のもう一つの特色は、漫画家と編集者との関係を明かしていることだ。元々「ジャンプ」は後発だったため、新人の育成に力を入れてきた。著者が初めて担当した新人は『アストロ球団』の中島徳博だ。より読者の意表をつくアイデアを求める若い2人は、二人三脚どころか七転八倒。激した著者は、なんと中島の頭をトレーシングペーパーで殴ってしまう。漫画が最も熱い時代の熱いエピソードだ。

よく知られているように、「友情」「努力」「勝利」はこの少年漫画誌の編集方針だが、漫画家と編集者と読者をつなぐ約束の言葉でもある。


松本大介 
『本屋という「物語」を
 終わらせるわけにはいかない』
筑摩書房 1620円

盛岡の「さわや書店」は伝説の本屋だ。“魔法のPOP”と呼ばれる手書きの推薦文で、文庫本の外山滋比古『思考の整理学』などを売りまくったことで知られている。現役社員である著者が内側から見た「さわや」と本へのこだわりを熱く、しかも淡々と語っていく。

(週刊新潮 2018年5月17日菖蒲月増大号)



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