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北海道新聞で、道内民放各局の動向について解説

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<平成流転 文化の30年>
放送編(下)収益確保へ自社番組競う
 平成の30年間で、道内放送界は曲がり角を迎えた。好景気で伸びた売り上げは、平成20年(2008年)のリーマンショック以降減少。NHKが目指す放送とインターネットの常時同時配信に、民放側は警戒感を募らせる。

 道内の民放テレビ局は、平成元年(1989年)10月、TVHが本放送を開始し、東京キー局の系列5局がそろった。好景気の中、道内5局の売り上げは平成8年度(96年度)、平成期最高の計658億円を記録する。

 だが、リーマンショック後、道内民放局の売り上げは減少する。平成29年度(17年度)は計571億円(平成17年度にSTVから分社したSTVラジオを含む)と、平成5年度(93年度)の水準(579億円)に戻った。複数の道内局は「国内全体で広告費が大きく増えない中、道内局も広告収入の確保が課題だ」と強調する。

■DVDも鉱脈に

 収入増を期待されるのが自社制作の番組だ。STVは情報ワイド「どさんこワイド179」や、バラエティー「熱烈!ホットサンド」などの自社制作番組と、キー局の番組がともに好調。高い視聴率に支えられ、平成29年度(17年度)の売り上げは道内民放最高の157億円だった。

 他局も特徴ある番組制作に力を入れる。UHBは平成29年(17年)5月から、他局がキー局の番組を放送する金曜午後7時に、自社制作のバラエティー「発見!タカトシランド」を放送して好評だ。HBCは「あぐり王国北海道NEXT」で道内農業を紹介、TVHは「けいざいナビ」で道内各地の経済の話題を取り上げている。

 さらにNHK札幌放送局も、金曜夜を地域放送枠として「北海道クローズアップ」や「北海道スペシャル」を放送する。
 番組の2次利用も大切な収入源の一つだ。HTBは「水曜どうでしょう」のDVD27作の累計出荷数が450万枚を超えた。アイドルグループ乃木坂46の橋本奈々未(旭川出身)が出演したUHBの番組「乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学」(冬編、夏編)のブルーレイディスクとDVDの売上枚数は計1万5千枚だった。

■ネット配信警戒

 道内各局が番組制作を競い合う中、全国的にはテレビ離れが進んでいる。総務省の調査では、1日の平均テレビ利用時間(リアルタイム視聴)は平成29年(17年)に2時間39分で、5年前より25分減った。ネットは同年、1時間40分で5年前より29分増え、新聞(平成29年=10分)やラジオ(同11分)よりはるかに多く、テレビに迫りつつある。

 さらに、NHKは来年度中に放送とネットの常時同時配信を行う方針を示した。これに対し日本民間放送連盟(東京)は、NHKの常時同時配信が行われれば「民放、新聞、ネット動画配信などの民間事業と競合する可能性が高まる」と警戒する。道内局も「もしもNHKが常時同時配信をすれば、今後、テレビ視聴自体が減るなどの影響が出るかもしれない」と、NHKの動きを注視している。

 民放の常時同時配信について民放連は「現時点では事業性が見いだしがたい」としている。ある道内局は「視聴者のニーズがはっきりせず、費用に見合った収入が得られるかなど解決できていない課題がある」と慎重だ。(中村康利)

上智大・碓井教授に聞く 
制作力高め地域局の独自性/営業でも効果的

 道内民放各局の特徴や課題について、上智大の碓井広義教授(メディア文化論)に聞いた。

                  ◇

 一般に、地方民放局には、系列のキー局の番組を流すネットワークの機能がある。経営面で見るならば、キー局の番組を流して広告収入の一部を受け取っているのが楽といえば楽だ。しかし、それだけなら地方局の意味、価値は弱い。自社番組を制作し、制作力を高めることが重要だ。

 道内民放局は、キー局を除けば、大阪や名古屋の各局に次ぐ経営規模で、地方局としては比較的大きい。その中で特に夕方の大型情報番組を自社制作して放送し、それぞれ競い合っている。こういう熱気があるのが北海道の放送局の特徴だ。道外の地域と比べても高いレベルの番組が作られている。

 STVの「どさんこワイド」が、地域の情報ワイド番組の地盤を作った。このジャンルに他局が参入し、情報ワイド番組の放送時間も長くなった。視聴者から見れば、エンターテインメントとしておもしろく、役立つ情報を得られ、しかも各局から自分の見たい番組を選ぶことができる。

 道内各局はいい意味で地域情報を発信することを主眼に置いてきた結果、報道体制が充実し、地震、台風などの災害時に頼りになる情報源にもなっている。以前なら、事故や災害が起これば大半がNHKを見ていた。それが民放も速く正確に伝える努力をしており、どの局も遜色ないと思う。

 番組制作力をつけることは経営面でも大事だ。全国放送の広告主は大企業が中心だ。地方局の優れた番組は、地元のスポンサーが地域の視聴者に向けてCMを打つのに都合が良い。夕方の情報番組は、営業的にも局をリードする形になっている。

 国内の広告費は平成19年(2007年)に約7兆円だったのが、翌年のリーマン・ショック以降低迷し、平成28年(16年)は約6兆3千億円だった。その中で道内民放各局は番組の自社制作を含め、地域の放送局として生き残る努力をしており、健闘している。

 民放の経営は厳しいとはいえ、北海道で民放の統廃合がすぐに起こるとは考えにくい。生き残るためのポイントは、「この番組はうちでしか見られない」という、独自の内容で視聴者が見たいコンテンツを作り、発信できるかだと思う。

<道内の放送を巡る平成の主な出来事>

平成元年(1989年) 1月 昭和天皇逝去。テレビ各社は特別編成、民放はCM抜きで放送
          10月 TVHが本放送を開始。道内民放5局体制に
平成3年(91年)  10月 STV「どさんこワイド120」開始
平成5年(93年)   4月 NHK札幌放送局「北海道クローズアップ」開始
            7月 北海道南西沖地震で各局が速報
平成8年(96年)  10月 HTB「水曜どうでしょう」開始
平成9年(97年)  11月 HBCが拓銀経営破綻をスクープ
平成12年(2000年)1月 STV「1×8いこうよ!」開始
           3月 有珠山噴火で、各局が大がかりな取材体制
               BSデジタル放送本放送開始
平成15年(03年)  4月 HTB「イチオシ!」開始
               TVH「けいざいナビ」開始
平成18年(06年)  6月 道央圏で地上デジタル放送開始
平成22年(10年)  3月 HBC「グッチーの今日ドキッ!」開始
平成23年(11年)  3月 東日本大震災で、民放各局がCM抜きの特別編成で放送
平成26年(14年)  3月 NHK札幌放送局「ネットワークニュース北海道」を「ほっとニュース北海道」に改称
平成27年(15年)  3月 UHB「みんなのテレビ」開始
平成29年(17年)  5月 UHB「発見!タカトシランド」開始
平成30年(18年)  9月 HTBが本社を札幌市豊平区から同中央区に移転

(北海道新聞 2018.09.24)




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