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日刊ゲンダイで、「コロナ禍とエンタメ業界」について解説

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「シルク・ドゥ・ソレイユ」破産は

対岸の火事ではない…

エンタメ業界が存続かけ決死の試行錯誤

 

カナダに拠点を置く世界的なサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」が29日、同国の破産法に基づき、会社更生手続きに入ると発表した。

「シルク――」は新型コロナの影響で、3月以降、各地の劇場公演を中止し、約9億ドル(約970億円)の債務返済ができなくなった。申請に伴い、ダンサーを含めスタッフのおよそ95%にあたる約4700人を解雇すると発表した。

1984年の設立以来、ショービジネス界をリードしてきた世界的パフォーマンス集団を襲ったコロナ禍だが、日本も決して対岸の火事ではない。

「ぴあ総研」によれば、コンサート、舞台、スポーツなど国内の「ライブ・エンターテインメント業界」は、新型コロナの影響による公演の中止・延期により、今年2月から来年1月までの1年間で、年間市場規模の8割弱を失うという。損失額は約6900億円。内訳は、最も多い音楽系が約3300億円、演劇系は約1600億円だ。

すでに公演中止で立ち直れないほどの経済的損失を被った劇団も多い中、女優・劇作家の渡辺えりさん(65)が文化芸術の支援を求める要望書を文化庁に提出したことは記憶に新しい。日刊ゲンダイのインタビューでも「文化芸術には金銭的な支援が必要。コロナで演劇を殺しちゃいけない」と訴えた。

一方、「新しい生活様式」に応じて、感染対策を徹底した上での公演や「リモート配信」なども増えている。

歌手の加藤登紀子さんは28日、約3カ月ぶりとなるコンサートを渋谷のBunkamuraオーチャードホールで決行。収容人数2150人の会場で、客席を990人に制限。ソーシャルディスタンスを確保し、検温、マスク着用、手指の消毒など感染対策を徹底した上での開催となった。3月から上演を中止していた歌舞伎も、8月1~26日に、東京・歌舞伎座が「八月花形歌舞伎」で5カ月ぶりに公演を再開すると発表。座席数を半分以下に絞り、4部制で、1時間程度の1演目を上演するという。

また、人気バンドのサザンオールスターズは25日、「無観客ライブ」を有料でリモート配信した。3600円のチケット購入者は18万人に及んだという。

コロナ禍で困窮極まるエンタメ業界は、ニューノーマル時代の興行のあり方を模索中だ。しかしマネタイズがどこまで成功するかはどれも未知数。それでも文化や芸術を絶やさないため、“赤字覚悟”で挑む例も多いという。

メディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。

「確かに文化というものは、不要不急で“なくはない”という側面があるかも知れません。しかしながら、コロナに限らず、いろいろな意味で閉塞感に包まれている世の中では、精神的な部分、つまり心を支える文化というものは、平時より重要になってくると思います」

■「送り手を守ると同時に自分を守ることにも」

さらに碓井氏は、甚大な経済的損失を被りながら、存続のために試行錯誤を続けるライブ・エンタメ業界を守ることの大切さを説く。

「本当に大変だと思います。しかし、そこに行った人たちにとっては、ある種の救いになっているわけです。文化を受け取る側も、文化を発信する側の取り組みに、より積極的に参加し、できる範囲で共に文化を守っていくという“協働作業”の意識を持つことも大切だと思います。それは送り手を守ると同時に自分を守ることにもつながるんです」

“第2波”の襲来が懸念される中、エンタメ業界の挑戦は続く。

(日刊ゲンダイ 2020.07.02)


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