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北海道新聞で、「コロナ後のテレビの行方」について

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<水曜討論>

コロナ後のテレビの行方

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、テレビ番組の制作現場にも影を落とした。ドラマは撮影が中断し、タレントらがリモートで出演するバラエティーや情報番組が広まる一方、旧作の再放送も目立った。外出自粛のため自宅で視聴する人も増え、テレビの魅力が再認識された。コロナの収束が見通せない中、テレビは今後どこに向かうのか。現場の事情に詳しい2人に聞いた。(文化部編集委員 石井昇)

 

試行錯誤重ね新しい形を

メディア文化評論家 碓井広義さん

コロナ後のテレビで気になったのは、作り手たちが従来と変わらないことばかりを目指しているように見えることです。日本でテレビ放送が始まって67年。番組作りはある種の完成形になっています。コロナという「外圧」で変わらざるを得ないとしたら、それをプラスに持っていくべきでしょう。以前やりたくてできなかったことも、できるはず。そういうトライが少なかったように思います。

ただ、ドラマではいくつか動きがありました。NHKが放送した「今だから、新作ドラマ作ってみました」は、テレビ会議をやっているような画面でそれぞれ別の場所にいる人たちが登場します。リモートドラマと呼ばれます。WOWOWの「2020年 五月の恋」は画面を二つに区切り、2人の出演者の電話のやりとりを映します。ある種の会話劇ですが、舞台を見ているよう。リモートドラマの枠を超え、かなりよくできていました。現状を逆手に取り、新しい物を生み出した例です。

緊急事態宣言は解除されましたが、新しい生活様式を踏まえた日常が始まっています。当然、テレビもその中に置かれ、もうバラエティーで芸人たちが20人もひな壇に並ぶような番組はできないでしょう。ロケはスタッフら5、6人がひと固まりになって行くのが型になっていました。しかし、スマホが撮影機材として発達した今なら、作り手1人スマホ1台で済みます。平時に変えられなかったことも、今ならできるのです。

「若者のテレビ離れ」と言われますが、今の若い人たちはテレビ番組とスマホの動画の両方を楽しんでいます。SNSで話題にするもののかなりの部分はテレビのネタです。過去に話題となったドラマが再放送され、若い人たちも「テレビ面白いじゃん」と見直した面もあると思います。

最近、気になるニュースがありました。若者の就職希望先のランキング(ワークス・ジャパン調べ)でテレビ東京が業界のトップになったのです。テレ東はキー局の中でも特に予算が少ないのに、今までに無かった新しいバラエティーやドラマを生み出しています。万人向けの丸くつるんとした番組でなく、(心に)刺さってくる。昨年、広告費がインターネットに抜かれ、業界全体が縮小傾向にあります。でも、単にお金があればいいのではない。知恵と工夫とクリエーティビティー(創造性)でやっていけばいいのです。

確かにテレビは人が作る物です。人と会ったり、接したりしてはいけないというのは手足を縛られたようなもの。コロナはこれまで経験したことがない危機です。従来のスタイルを変えるにしても正解があるわけではなく、試行錯誤しながら探るしかありません。

ここでテレビの既成概念を取り払って、ゼロから始めてもいい。私も20年間、テレビ番組を作っていましたが、そのころから言っているのが「テレビ風呂敷論」。テレビは箱に入らないようなどんな形のものでも包んでしまう。あれもテレビ、これもテレビです。姿形が少しぐらいいびつだろうと、「これがテレビ」と言って出せばいいのです。風呂敷に包んでドンと。後は視聴者に判断してもらえばいいのです。

うすい・ひろよし 長野県出身。慶応大法学部卒。1981年から20年間、テレビマンユニオンで番組制作に携わる。千歳科学技術大教授などを経て、今年3月まで上智大文学部新聞学科教授。11年から本紙に「碓井広義の放送時評」を連載中。65歳。

(北海道新聞 2020.07.08)

 

 


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