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倉本聰×是枝裕和 特別対談、土地に根づいた物語の魅力

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<碓井広義の放送時評>

倉本聰×是枝裕和 特別対談、

土地に根づいた物語の魅力

 

対談番組の成否はテーマと人選で決まる。1月23日に放送された、HBC創立70周年記念 倉本聰×是枝裕和 特別対談「“あのとき”から~北の大地とドラマと…」を見て、あらためてそう思った。

第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールに輝いた映画「万引き家族」。その是枝監督が富良野を訪ねた。放送開始から40年になる「北の国から」(フジテレビ-UHB)をはじめ、北海道を舞台に数多くの名作を生み出してきた倉本と、ドラマと脚本について語り合おうというのだ。

是枝にとって倉本作品は学生時代から脚本の教科書だったそうだ。今や世界的な映画監督だが、倉本と向き合う姿勢は終始謙虚だ。具体的かつ的確な質問が繰り出され、倉本もまた真摯(しんし)に答えていく。

たとえば「幻の町」(76年)は、かつて住んでいた樺太・真岡町の地図を作ろうとする老夫婦(笠智衆、田中絹代)の物語だ。そこには認知症になった倉本の母親が、疎開先の家や集落を鮮明に思い出す姿が投影されていた。

また「りんりんと」(74年)では、東京から北海道へと向かうフェリーの中で、病気を抱えた母親(田中)が息子(渡瀬恒彦)に尋ねる。「母さん、ほんとに生きてていいの?」と。これもまた倉本が母親から聞いた衝撃の言葉だった。

さらに「ばんえい」(73年)で、父(小林桂樹)と息子(中村まなぶ)が言い争いから取っ組み合いになる場面。父は息子に腕力でかなわなくなったことに屈辱を覚え、息子は父の老いを知ってがくぜんとする。確かに時間は残酷で、やがて親は子供に遠慮するようになる。

倉本は自らの記憶を物語に溶け込ませたことを明かし、是枝も自分と父親との関わりに触れながらこの作品への強い思いを語った。自身の体験をドラマに生かす、いわば「わたくし性」をエンタメ化する手法は、形を変えて是枝にも受け継がれていたのだ。

HBCはこの3作だけでなく、大滝秀治主演「うちのホンカン」シリーズなども制作した。これを放送したのが、かつての「東芝日曜劇場」である。

「日曜劇場」となった現在は普通の連続ドラマ枠だが、当時は全国各地の放送局が制作した作品も流される貴重な場だった。この舞台から、HBCは何本もの秀作を全国に送り出した。主軸となったのが同局の守分寿男(もりわけとしお)ディレクターであり、倉本だ。

そんなドラマ制作の歴史も振り返りながら、「土地に根づいた物語」の魅力を再認識することができた。

(北海道新聞 2021.02.06)


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