日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、尾野真千子が主演のNHK土曜ドラマ「足尾から来た女」を取り上げました。
前後編で、今週末で完結ですが、十分、“見るべきもの”だと思います。
これから始まる特定秘密保護法時代を
連想させるに十分
よもやドラマで田中正造が見られるとは思わなかった。NHK土曜ドラマ「足尾から来た女」である。明治時代に公害と環境破壊の重大性を訴え、足尾銅山の鉱毒事件を命がけで闘った田中正造(柄本明)。その指示で社会活動家・福田英子(鈴木保奈美)の家に家政婦として住み込むのが、谷中村の娘・サチ(尾野真千子)だ。
脚本は池端俊策。登場人物のセリフにも気迫がこもる。銅山から流れ出る鉱毒水や鉱毒ガスのために、住む家も田畑も奪われた谷中村の人々。彼らの思いを代弁して正造が言う。「百軒のために一軒を潰し、町のために村を潰すのは野蛮国だ」。
また東京に出たサチは、都会の人たちの無関心に愕然とする。「谷中のことなんか誰も心配していなんです。よその世界のことなんです」。このドラマを見ていて胸が痛むのは、谷中村と福島、鉱毒事件と原発事故が重なってくるからだろう。
「銅山を止めなければ、鉱毒は止まらない」などと政府や国策企業を痛烈に批判する正造や、支援する活動家は官憲の厳しい監視下に置かれ、いきなり逮捕することも可能だ。サチにもスパイ行為を強いてくる。まさに治安維持法の時代であり、これから始まる特定秘密保護法の時代を連想させるに十分だ。この気骨あふれるドラマ、今週末に波乱の後編が放送される。
(日刊ゲンダイ 2014.01.21)