日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」で放送された、「いか飯の女たち 完結編」を取り上げました。
ザ・ノンフィクション
「いか飯の女たち 完結編」
地元制作者の強みが光った
優れた人間ドキュメント
フジテレビ「ザ・ノンフィクション」(日曜午後2時)は、民放では貴重なドキュメンタリー枠だ。
最近ドラマはイマイチのフジだが、水曜深夜の「NONFIX」と並んで、ここでは見るべき1本と遭遇できたりする。
16日の放送は「いか飯の女たち 完結編」。70年前に北海道・森町で生まれた「いかめし」は物産展の大人気商品だ。主役はその場で作って売る、おばちゃんたちである。
番組では60代のいか飯の女2人に密着。東京、名古屋、熊本、バンコク、そして台湾と行商の旅を続ける姿を追っていた。
たった一人で現地へ飛んで、仕込みから販売までをこなしていくハードワークだ。海外では地元の人の味覚に合わせて作り直しも行う。長い間、家を留守にするため、病気の家族も気がかりだ。自分の年齢や健康にも不安が増している。
だが、彼女たちは仕事をやめない。単なる経済的理由だけでなく、働くことが生きる証しになっているからだ。番組は節度のある距離を保ちながらも、その本音や気持ちの揺れを丁寧にすくい上げ、見る側に伝えている。
また時々挿入される過去の取材映像も、彼女たちの人生の奥行きを感じさせて効果的だった。こうした蓄積は地元の制作者ならではの強みだろう。
今回は北海道だったが、全国各地の作り手による人間ドキュメントが続々と発信されるといい。
(日刊ゲンダイ 2014.02.18)