80歳で亡くなった渡辺淳一さん。
作家として最期まで現役感に満ちていた、堂々の大往生ではないでしょうか。
合掌。
その著書『告白的恋愛論』を、番組で紹介したことを思い出しました。
2010年1月のHTB「スキップ」でのこと。
毎回、おススメの本を紹介するコーナーがあったのです。
渡辺淳一『告白的恋愛論』は壮大な自慢話?
道内の陸別町でマイナス29度!
札幌も雪は降っているが、陸別ほどの寒さではない(笑)。
今日はHTB「スキップ」の生出演。
北海道出身の作家とその新作を紹介する「碓井教授の徹夜本」コーナーでは、渡辺淳一さんのエッセイ集『告白的恋愛論』(角川書店)を取り上げる。
これまで関わりのあった女性たちとの“恋愛模様”がずらっと並ぶ、まさに告白本だ。
もちろん、作家が文章にするわけだから、事実そのままではあり得ない。
名前はともかく実在の女性が登場することもあり、「書いていいこと」の範囲は守っているはずだからだ。
それに、あくまでも男性側から、つまり渡辺さん本人の側からのみ見た恋愛の経緯である。
エッセイとはいえ、恋愛一代男が語る自伝的“物語”として読むべきなのだ。
しかし、それらを差し引いても、ここに書かれた渡辺さんのモテっぷり、旺盛な恋愛欲は尋常ではない(笑)。
医師として札幌で仕事をしながら小説を書いていた渡辺さん。
やがて、東京に出て本格的に作家として立つことを決心するが、一緒に上京するのは妻ではなく愛人なのだ。やるなあ(笑)。
この女性(このエッセイでは裕子となっている)との“いきさつ”は、後に小説『何処へ』(ヒロインの名も裕子)で描かれる。
そうなのだ。
この本の面白さは、実在の女性、実際の恋愛が、いずれも渡辺作品のモデルとなっていることにある。
前記の『何処へ』の裕子だけでなく、『阿寒に果つ』の純子、『ひとひらの雪』の人妻・霞、そして『失楽園』の凛子にも、モデルとなった女性、モチーフとなった恋愛が存在するのだ。
あらゆる恋愛が、すべて作品の中に取り込まれ、収斂し、昇華する、ということだろうか。
いやあ、作家というのは凄いなあ。
若い頃の渡辺さんは、カノジョに自殺未遂されたり、三角関係のもつれが原因で逮捕されたりと、相当なやんちゃだ。
さらに驚くのは、過去の女性たちはすべて過去かといえば、そうではなく、現在も付き合い続けている女性もいるというじゃないか。
お見事です。
そういう意味では、この『告白的恋愛論』は“壮大な自慢話” (笑)とも言えるのだ。
それにしても心配したくなるのは、作家の妻のこと。
ばんばん恋愛をして、ばんばん小説にして、さらにそれをリアルなエッセイとして書いてしまう夫を持つ妻は、そりゃ大変だろう。
まあ、夫婦のことは夫婦にしか分からないので、そんな心配は余計なお世話かもしれない。
この本から学ぶべきは、渡辺先生の、女性たちに対する「直情径行」(笑)と、「感謝の心」だ。
ただし、素人は安易に真似してはいけません(笑)。
(碓井広義ブログ 2010年01月16日)