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Channel: 碓井広義ブログ
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北海道新聞の連載で、見るべき「春ドラマ」について

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、4〜6月クールの連続ドラマについて書きました。


池井戸ドラマと刑事ドラマの同時多発
痛快さ、重層的絡み見もの
昨年大ヒットした、池井戸潤原作の『半沢直樹』。今期は『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ)と『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS)という2本の“池井戸ドラマ”が登場した。

池井戸作品には企業小説と呼ばれるものが多い。しかし、主軸はあくまでも企業内の人間模様であり、そこで展開される人間ドラマである。また、山あり谷ありの起伏に富んだストーリーと後味の良さも持ち味だ。

『花咲』は、『半沢』と同じく銀行が舞台。問題を抱えた支店を指導する「臨店」担当の舞(杏)が主人公だ。彼女は、たとえ相手が上司であれ顧客であれ、間違ったことや筋の通らぬことは絶対に譲らない。通常、職場で自由に言いたいことを言ったら大変なことになる。だからこそ、何でも口にする舞は危うくもあり、痛快でもあるのだ。

一方の『ルーズヴェルト・ゲーム』の舞台は中堅精密機器メーカーだ。大手の下請けとして成り立っており、発注元の思惑で業績は大きく揺れ動く。社長の細川(唐沢寿明)がいかにして苦境を脱するかが見どころだ。

このドラマの特色は、企業ドラマであると同時に、社会人野球の世界を描く野球ドラマでもあることだろう。廃部寸前の野球部が、会社と同様、「逆転勝利」をつかむことができるのか、目が離せない。

そして、同時8本の乱立ぶりが“刑事ドラマ”だ。制作側がこのジャンルを好む理由はいくつかある。まず、人の生死に関わるためドラマ性が高い。次に個性的なキャラクターを作りやすい。そして一話完結形式が視聴者に好まれることなどだ。

そんな中で際立っているのが『MOZU〜百舌(モズ)の叫ぶ夜〜』(TBS)である。爆弾テロで妻を失った公安部特務第一課の倉木(西島秀俊)、現場に居合わせた公安の女性刑事・明星(真木よう子)、公安を目の敵にする捜査第一課の大杉(香川照之)などが火花を散らす。一昨年の『ダブルフェイス』と同様、WOWOWとの共同制作だ。

ただし、連続物とはいえ話がやや複雑すぎる。テロ組織vs.警察、刑事部vs.公安部、西島vs.香川などいくつもの対立軸が重層的に絡み合うためだ。脚本の力量が問われるところだが、それでもこのドラマは十分魅力がある。単純な善悪を超えた、人間の業(ごう)や性(さが)のようなものまで描こうとしているからだ。刑事ドラマの到達点として、見るべき1本と言っていい。

(北海道新聞 2014.05.12)


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