日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHKスペシャル「シリーズ故宮」について書きました。
NHKスペシャル「シリーズ故宮」
開催中のイベントPR番組と思われたが
中身はそんなレベルを超えていた
先週末、NHKスペシャル「シリーズ故宮」が2夜連続で放送された。東京・上野の国立博物館で開催されている「台北国立故宮博物院展」と連動した企画だ。
NHKは同展の主催に名を連ねており、イベントPR番組と思われても仕方がない。だが、中身はそんなレベルを超えていた。
特に第1回「流転の至宝」。かつて北京の故宮(紫禁城)に収蔵されていた貴重な文物が、なぜ今、台湾にあるのか。その波乱に満ちた軌跡を追って、見ごたえがあった。
ドキュメントの軸となるのは故宮学芸員の一人だった荘尚厳さんだ。日中戦争や国共内戦のために、何度も破壊や散逸の危機にみまわれた品々を必死で守ろうとした。
戦火を逃れ、大陸を転々としただけでなく、最後は台湾まで移送する一大事業を、番組はアニメも使いながら再現していく。
また「翠玉白菜」をはじめとする至宝を映し出す映像が素晴らしい。使われているのは8K画質で出力するカメラで、皇帝コレクションの超細部までを見せてくれた。
展示の目玉「白菜」はもちろん、北宋時代に作られた、汝窯(じょよう)青磁の美しさにも驚く。
「互いが理解し合うには、互いが持つ良いものに目を向け、それについて話し合い、どうやって受け継いでいくかを考えることが必要です」と、荘尚厳さんの三男が父の思いを代弁していた。
(日刊ゲンダイ 2014.07.01)