日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHK朝ドラ「花子とアン」について書きました。
NHK「花子とアン」
爽やかなヒロイン像を守りつつ、
不倫という通俗性を
堂々と盛り込むチャレンジ精神
以前この欄で「あまちゃん」を取り上げた時、「母娘3代のトリプルヒロインが効いている」と書いた。それに倣えば、現在のNHK朝ドラ「花子とアン」は花子(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)によるダブルヒロインのドラマだ。
放送が始まる前、「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子って誰?という印象だった。そんな主人公を、演技に定評のある吉高がうまく味付けし、魅力的に作り上げてきた。
だが、それ以上に驚いたのは実在の花子が歌人・柳原白蓮と親交があったことだ。白蓮の人生は波瀾万丈で、福岡の炭鉱王である夫を捨て、7歳下の社会運動家・宮崎龍介(ドラマでは宮本龍一)と駆け落ちした「白蓮事件」は大正期を代表する不倫スキャンダルだ。
ちなみに宮崎龍介は、孫文の支援で知られる宮崎滔天の長男である。そりゃ世間も騒ぐはずだ。
ドラマは現在、「白蓮事件」の真っ最中。凄艶な恋する女と化した蓮子を仲間が喜々として演じている。駆け落ちシーンでは、語り手の美輪明宏が歌う「愛の讃歌」まで流れた。またその翌朝、一夜を共にした部屋で仲間は鮮やかな赤の長襦袢姿を披露。役者も作り手もノリノリなのだ。
これまでの朝ドラの爽やかなヒロイン像を守りつつ、不倫という通俗性を堂々と盛り込むチャレンジ精神。後半戦突入で益々発揮されそうだ。
(日刊ゲンダイ 2014.07.22)