日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、テレビ朝日の連ドラ「ゼロの真実〜監察医・松本真央〜」を取り上げました。
“美少女”武井咲の笑顔封印
20歳の女性を少女とは呼ばないかもしれない。しかし武井咲は20歳になっても「美少女」という印象が強い。「20歳の美少女」が監察医って、そりゃ無理筋ではないのか。テレビ朝日「ゼロの真実〜監察医・松本真央〜」の設定には懸念を抱いていたが、意外や今クールのドラマの中の隠れた秀作となっている。
まず警察ミステリーとしての骨格がしっかりしていることだ。先週もミイラ化した遺体をめぐって、犯人である歯科医の夫を追い詰める過程に見応えがあった。見る側にも「こいつが怪しい」と思わせておいて、犯行の決め手となる部分を知らせずに引っ張る。最後は武井の観察眼が「思わぬ事実」を見つけ出した。
次の特徴として主演は確かに武井だが、出番の時間は割と短いこと。これはキムタクの「HERO」でも功を奏しているスタイルだ。このドラマでは先輩監察医・真矢みき、捜査一課の刑事・佐々木蔵之介、部長監察医・生瀬勝久といった面々の快演や怪演による群像劇を、一種のバラエティ感覚で楽しめる。
そして最後に“美少女”武井咲の笑顔封印という逆手の演出だ。彼女の「喜怒哀楽を持たない(出さない)」性格はどこから来たのか。その鍵を握る謎の死刑囚・橋爪功の置き方も上手い。武井に笑顔が戻るのは恐らく最終回だろうが、その決着を待ってみようと思う。
(日刊ゲンダイ 2014.08.12)