14日夜に放送された、NHKスペシャル「少女たちの戦争 〜197枚の学級絵日誌〜」を見た。
滋賀県大津市に、太平洋戦争末期の1年間小学5年生の少女たちが書き続けた絵日誌が残っている。この絵日誌が今、銃後の戦争を知る貴重な資料として、海外の大学の研究者から注目を集めている。日誌が描かれ始めたのは昭和19年4月。「感じたことをそのまま書きなさい」と若い女性教師の指導の下、日々の学校生活や友人関係、家族のことが瑞々しく綴られた。
ところが秋を過ぎると、少女たちは感じたことを書けなくなっていく。町に次々と届く戦死者の報せ、出没する米軍機。他人の前では感情を押し殺し矛盾した行動を繰り返す大人たちの不可解な姿。ヒタヒタと迫ってくる戦争の影は、農村の小学校の1学級も覆っていく。
今80歳を超える元少女たちは、日誌を書き始めて70年となる今年、改めて当時の自分たちの心の変化や大人たちの不可解な行動、そして教師が何故日誌を書かせたのか、関係者を辿って振り返ろうとしている。「自分たちの体験した戦争とは何だったのか」。彼女たちの戦争を見つめ直す軌跡に同行しながら、当時多くの地域が経験した戦争の実感・心の移ろいを見つめる。
毎年、この時期になると、NHKスペシャルで戦争番組が放送される。
そこでテーマとされるのは、たとえば戦争指導者たちの判断や決断だったり、線上にいた兵士たちの証言だったりすることが多い。
もちろん、それはそれで意義のある番組だ。
しかし、今回のNスペは違った。
テーマとなっていたのは、戦時下の、子どもたちである。
銃後の庶民、それも子供たちの日常が、こうしてNスペの戦争番組で扱われたことは、記憶をたどっても、この10年は無かった。
画期的なことだ。
当時、小学校5年生の少女たちが描いていた絵日誌。
現在80歳を超える彼女たちが、日誌と共にあの時代を回想していく。
番組全体は、淡々と、静かに進められる。
だが、それだからこそ、子どもたちの内面、その“心”を侵食していく戦争の怖さや残酷さを実感することができた。
番組は、ひたすら、愚直に、絵日誌と少女たちが語る言葉に集中していた。
それが最も良かった点だ。
何より、大上段に戦争を扱っていない。
有名な出来事も、よく知られた人物も出てこない。
声高に何かを主張するするわけではない。
しかし、これを見た人は、戦争に対する静かな怒りと、戦争へと傾斜していく時代や社会や国家に対する不安や憤りを覚えるはずだ。
また番組の行間から、さまざまなことを感じ、自らも考えるだろう。
そのための余白を残す演出が見事だった。
そして、この番組を見た、戦争を経験している世代の人たちが、自分の子供や孫たちに、自らの体験を話して聞かせてくれたら、と思う。
再放送は、8月26日(火)午前2時15分〜3時04分(25日深夜)です。