日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHKスペシャル「少女たちの戦争〜197枚の学級絵日誌〜」について書きました。
NHKスペシャル
「少女たちの戦争〜197枚の学級絵日誌〜」
銃後の子供たちを描いた画期的な1本
毎年8月半ばになると、「NHKスペシャル」の戦争特集が放送される。今年は14日の「少女たちの戦争〜197枚の学級絵日誌〜」だった。
滋賀県大津市に、昭和19年から翌年にかけて小学5年生の少女たちが書いた絵日誌が残っている。
そこには、ありふれた地方の町の戦時下の日常が記録されている。学校の畑で野菜を作り、花を育てる。神社のお祭りや調理実習を楽しむ。空襲も殺戮もない生活だ。
しかし戦争の影は徐々に少女たちを覆っていく。出征する大人。援農としての田植え。空襲警報が鳴り響くようになると、絵日誌にも軍国主義的な言葉が増えていく。
やがて「にくらしきB29 今に見ていろこの戦(いくさ)」の文字と共に、真っ黒に機体を塗りつぶしたB29が描かれる。
当時、少女たちは何を見つめ、何を思っていたのか。現在80歳を超える彼女たちが、日誌と共にあの時代を回想していく。
番組全体は静かで淡々としており、ひたすら絵日誌と少女たちが語る言葉に集中していた。だからこそ子供たちの内面、その心をも侵食していく戦争の怖さや残酷さを実感することができた。
この10年、Nスペの戦争特集のテーマは戦争指導者の実態や戦場にいた兵士の証言などが中心だった。今回、銃後の子供たちの日常に目を向けたことで、いわば画期的な1本となっている。
(日刊ゲンダイ 2014.08.19)