日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、テレビ東京「孤独のグルメ」シーズン4を取り上げました。
テレビ東京「孤独のグルメ」シーズン4
最大の美点は何も変わらないこと
テレビ東京「孤独のグルメ」が堂々のシーズン4である。個人の輸入雑貨商・井之頭五郎(松重豊)が、商談のために訪れた様々な町で、実在する食べ物屋に入って食事をする。ただそれだけのドラマだがクセになる。
番組名物は食べるシーンにおける松重の“心の声”だ。先週は阿佐ヶ谷のハワイ料理店だったが、枝豆ガーリックを口に入れて、「うーん、悪くない」。手づかみでオックステールにかぶりついて、「おー、これは美味い。超カメハメハだ!」。
スーツにネクタイの中年男が真剣に、集中して料理を楽しむ。見た目、食感、味はもちろん、店全体の雰囲気も料理として味わい尽くす。その一部始終が、松重の表情の微かな変化と心の声とで表現されるのだ。
しかも、語られるのがいわゆる薀蓄じゃないところがいい。「うーん、胃袋がフラダンスを踊っている」なんて言われたら、苦笑いしつつも、ついその店に行って食べてみたくなるではないか。
この番組最大の美点は、シリーズを重ねても何ら変わっていないことである。シリーズ化されると、つい以前とは違った要素を加えたくなるものだ。
しかしファンはそれを望んでいない。千変万化の時代に、“変わらない場所”があることの安堵と癒し。松重豊は往年の「007」や「寅さん」と並ぶ、オトナの男のためのヒーローである。
(日刊ゲンダイ 2014.09.03)