獅子文六の名前も、『娘と私』のタイトルも知っていたが、読んだことはなかった。
しかし、ちくま文庫の11月の新刊として書店に並んだことで、手に取ってみた。
昭和28年から31年にかけて、「主婦之友」に連載された自伝小説だ。
読み始めると、結構面白くて、止まらない。
フランス人の妻との間に生まれた娘、麻里。
その妻は病気で亡くなってしまい、娘と2人の生活が始まる。
慣れない父親稼業には無理があり、やがて麻里を女学校の寄宿舎に入れる。
だが、今度は麻里が病気になってしまい、しかも自分の再婚も・・・・。
約60年前の小説だが、家族に対する情愛や思いは、時代が移ろうと、そう簡単に変わるものではない。
ちなみに『娘と私』は、昭和36年に放送された、NHK朝ドラ第1作目の原作だ。
今週の「読んで書評を書いた本」は次の通りです。
小川征也 『先生の背中』 作品社
齋藤 孝 『自伝を読む』 筑摩書房
広瀬隆・後藤克幸 『今夜も肴はビートルズ!』 KTC中央出版
尾崎俊介 『ホールデンの肖像』 新宿書房
木田 元 『哲学散歩』 文藝春秋
* これらの書評は、
発売中の『週刊新潮』(12月4日号)
読書欄に掲載されています。