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【新刊書評2025】『文学ノート*大江健三郎』ほか

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「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

 

鹿島茂

『古本屋の誕生~東京古書店史』

草思社 2420円

本好き、古本好きには堪えられない一冊だ。中世~近世の本屋史に始まり、明治~昭和期の東京古書店の歴史までが語られる。江戸時代には区別がなかった新刊本屋と古本屋の分化。丸善の創業者・早矢仕有的(はやし ゆうてき)や慶應義塾出版局を興した福沢諭吉の革新性。中でも神田神保町の古書街が辿った起伏に富む繁盛記が興味深い。そして現在、著者が「サブカル結晶作用」と呼ぶ古書界の波動の真相とは?

 

垣見 隆

『地下鉄サリン事件はなぜ防げなかったのか~元警視庁刑事局長 30年後の証言』

朝日新聞出版 2090円

1995年2月20日、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた。本書は当時の警察側責任者だった著者による証言集だ。事件発生が教団施設の大捜索の直前だったのはなぜか。また警察内部の信者から情報が洩れていたことや、刑事局と警備局の連携をめぐる問題についても詳細が明かされる。さらに未解決のまま公訴時効となった國松孝次・警察庁長官(当時)狙撃事件に関する証言も貴重だ。

 

田中陽造

『ゆきてかへらぬ~田中陽造自選シナリオ集』

国書刊行会 4400円

1970年代の日活ロマンポルノや『ツイゴイネルワイゼン』などの脚本家として知られる著者。現在、根岸吉太郎監督『ゆきてかへらぬ』が公開中だ。本書には上記を含む9作が収められた。自作解題によれば、『魚影の群れ』は吉村昭の原作小説を大幅に変えている。また『セーラー服と機関銃』の薬師丸ひろ子の台詞「カイカン」も赤川次郎の原作にはなかった。〝読む名画座〟の開幕ベルが鳴る。

 

工藤庸子

『文学ノート*大江健三郎』

講談社 4290円

3年前の『大江健三郎と「晩年の仕事」』に連なる大江論である。解読の合わせ鏡となるのが大岡昇平と蓮實重彦だ。大岡の『俘虜記』や『レイテ戦記』に触発されながら『芽むしり仔撃ち』や『洪水はわが魂に及び』と向き合う。また蓮實の批評を踏まえた上で、『万延元年のフットボール』と『同時代ゲーム』の分析に挑む。明確化するのは、大江作品における「神話・歴史・伝承」の意味だ。

(週刊新潮 2025.04.03号)

 

 

 


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