発売中の「サンデー毎日」最新号で、NHK朝ドラ「まれ」についてコメントしています。
NHK連ドラ「まれ」好発進
カギを握るのは
「土屋太鳳と田中裕子」の愛憎劇
NHKの新しい朝ドラ「まれ」が好調な滑り出しを見せている。初回の平均視聴率は関東地区で21.2 %。20%を超えたのは、2013年度前期の「あまちゃん」以来、5作連続だ。
好発進の要因の一つは、全体的に明るい作品づくりといわれている。「花子とアン」「マッサン」と前2作はいずれも戦前戦中から戦後を描き、どうしても歴史の影が背景にあった。
上智大文学部の碓井広義教授(メディア論)が指摘する。
「今作は現代劇ということもあり、いい意味で気軽な気持ちで毎朝見たくなるように作られています。笑いとツッコミがあり、コメディータッチになっているところがいい。夢が大嫌いな女の子・希という基本設定も『どういうこと?』と興味をひきます。今後の展開に期待が持てますね」
これからのカギを握るのは、2人の役者と見られている。
1人はもちろんヒロイン役の土屋太鳳(20)だ。実は土屋、NHKの秘蔵っ子といわれている。ドラマデビューは10年の大河ドラマ「龍馬伝」。翌年には朝ドラ「おひさま」に出演し、昨年の「花子とアン」ではヒロインの妹役を演じている。他にも「真夜中のパン屋さん」「今夜は心だけ抱いて」などNHKの作品に出続けているのだ。
今回はオーディションを勝ち抜いての抜擢だが、NHKの期待のほどがうかがえる。
「能年玲奈や橋本愛とも異なり、また今どきのアイドルタイプでもありません。テレビ東京の『鈴木先生』で初めて見たのですが、骨太で非常にうまい女優が出てきたなという印象を持ちました」(碓井教授)
父(大泉洋)の破産や夜逃げから、希が人生をどう切り開いていくのか。若いけれどもキャリア十分な土屋の、説得力ある演技が楽しみだ。
もう一方のキーマンとなるのは田中裕子(59)だ。「『ごちそうさん』のキムラ緑子や『マッサン』の泉ピン子のように、パンチ力のある“いびり役”として期待されています。夜逃げ同然で石川県の能登に引っ越してきた希一家に対し、早くも嫌味な言葉を投げかけるなど、演技派の田中は要注目でしょう」(テレビ誌ライター)
逆境からスタートした「まれ」。単なるサクセスストーリーではなく、味のあるスパイスとして田中の絡みがドラマの成否を握っているともいえそうだ。
残念なダメ親父とデキた娘。物語は“鉄板”だが、ヒロインと脇を固める役者たちのバランスがうまくいき、稀(まれ)な名作となるか。
ジャーナリスト・青柳雄介
(サンデー毎日 2015.04.19号)