あらためて、“とんでもないこと”が起きていたのだと分かる。
『全電源喪失の記憶~証言・福島第1原発――1000日の真実』
(祥伝社)だ。
朝日新聞「吉田調書報道」の問題についても再認識。
以下、「週刊新潮」に書いた書評です。
工藤美代子
『恋づくし~宇野千代伝』
中央公論新社 1836円
『生きて行く私』で知られる作家・宇野千代が、98歳で亡くなってから約20年。奔放な恋愛と旺盛な創作で彩られた生涯が甦る。尾崎士郎、東郷青児、北原武夫などとの愛憎遍歴の深層も、取材と資料に基づく伝記的小説だからこそ描けた。千代は生涯、一人の女だ。
外山滋比古
『思考力の方法 「聴く力」篇』
さくら舎 1512円
「思考する力を得たければ聴け」と著者は説く。対話は生きた言葉であり、最高の思索はそこから生まれる。これまでの「読む書く」重視の落とし穴を指摘し、「聴く話す」の効用を示す。耳で判断し、口でまとめ、思考に結びつける、新たな知の方法のヒント集。
(週刊新潮 2015.04.23号)
共同通信社原発事故取材班、高橋秀樹:編著
『全電源喪失の記憶~証言・福島第1原発――1000日の真実』
祥伝社 1836円
4年前のあの日、福島第1原発で何が起きたのか。東電関係者、政治家、自衛隊員、地域住民など100人を超す証言をもとに探っていく。そこにあるのは使命感と誇り、愛着や愛情、過信と傲慢、そして無理解の怖さだ。安全とは?原発とは?を自問させる。
宮沢章夫
『長くなるのでまたにする。』
冬幻舎 1728円
「日常」がいかに非日常的かつ冒険的なものかを知る最新エッセイ集。著者は「シジミがいいと知る世代」のくくりに違和感を持ち、千円札以外は使えないコインパークに怒り、夜11時過ぎのファミレスの混雑に首を傾げる。いずれも思わず苦笑い。再読の罠に嵌る。
古賀義章
『アット・オウム~向こう側から見た世界』
ポット出版 2376円
地下鉄サリン事件から20年。オウムを考える際、「信者の視点」は欠かせないと言う著者は事件当時から取材や撮影を続けてきた。信者たちの肉声から、麻原崇拝教としてのオウムや共同幻想が生まれる過程が明らかになる。さらに「終わってはいない」という事実も。
荒俣 宏
『サイエンス異人伝~科学が残した「夢の痕跡」』
講談社ブルーバックス 1382円
ドイツとアメリカの科学博物館を巡りながら、20世紀という“科学と発明の時代” を解読する。ドイツが生んだカメラ、機関車、自動車、通信機。アメリカは電話、飛行機、ロケット、コンピュータ。かつてSFの中にしか存在しなかった道具はいかにして誕生したのか。
(週刊新潮 2015.04.30号)