テレビ番組もそうですが、CMは時代を映す鏡です。その時どきの世相、流行、社会現象、そして人間模様までをどこかに反映させています。 この春、流されているCMの中から、注目作を選んでみました。
●ソフトバンクモバイル 白戸家「お父さん回想する」編
映画『スター・ウォーズ エピソードⅣ/新たなる希望』を、有楽町の日劇で見たのは全米公開翌年の1978年。
それから約20年後に作られたのが『エピソードⅠ/ファントム・メナス』だ。後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの少年時代を描いた、後日談ならぬ衝撃の“前日談”だった。
このCMで驚いたのは、お父さん(声・北大路欣也さん)とお母さん(樋口可南子さん)が高校の同級生で、当時の“見た目”は染谷将太さんと広瀬すずさんだったことだ。特に今年の目玉、超新星アイドルである広瀬さんの起用はお見事。
また、染谷さんが上戸彩さんにそっくりな保健室の先生(上戸さんの二役)にトキメクのも、後年のお父さんを彷彿とさせて苦笑いだ。
今後、染谷さんと広瀬さん、二人の高校時代を舞台に、回想の枠を超えた前日談の物語が続々と展開されてもおかしくない。いや、ぜひ見てみたいものだ。
●ワイモバイル「ふてネコ お風呂で鼻歌」編
猫は気まぐれだ。素直に人の言うことをきかない。時には人間より偉そうに見える。ちょっとコシャクな存在だ。
このCMもそうだ。湯船につかりながらの鼻歌。小坂明子さんの名曲「あなた」の替え歌だが、「家を建てたニャら光とスマホ~」と宣伝も忘れない。
またカフェ編ではカウンターに肘をつき、「ワイモバイルのスマホでにゃんにゃん言ってみませんか」などとハードボイルド風につぶやいたりする。
約30年前、「なめんなよ」で大ヒットした“なめ猫”がいた。しかし、その暴走族風の学ランなどは、「人間に着せられちゃいました」という印象が強い。
その点、ふてネコは自然体だ。誰にも縛られず、また、こびない態度が気持ちいい。自らの哲学と価値観に生きる一匹オオカミ、いや一匹ネコのようではないか。
ちなみに、なめ猫の声はスタッフだという。声質もトーンも猫のふてくされぶりにぴったりで、演技賞ものだ。
●カルピスウォーター「海の近くで 初夏」編
若手女優にとって、“登龍門”と呼ぶべきCMがある。
橋本愛さんや二階堂ふみさんを起用してきた「東京ガス」。堀北真希さん、北乃きいさんが光った「シーブリーズ」。そして長澤まさみさん、能年玲奈さんなどを輩出した、この「カルピスウォーター」だ。
今回、第12代目キャラクターとして登場したのは黒島結菜(ゆいな)さん。『アオイホノオ』『ごめんね青春!』といったドラマで注目された短髪美少女だ。
特に『ごめんね・・』で演じた生徒会長役が印象に残る。自分が転校することを仲間に隠しながら、文化祭の準備に没頭する姿が何ともいじらしかった。
このCMの舞台は桟橋だ。カルピスウォーターを飲んだ後、隣に座った男の子に「何見てんの?」と、いたずらっぽい笑顔を向ける。
そんなこと言われたって困る。こんな少女がいたら誰だって見ちゃうだろう。
そして、この日の風景を一生忘れない。・・・・それが青春。