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全国広報コンクール「映像」部門の審査結果と講評

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全国広報コンクールの審査結果が、月刊「広報」に掲載されました。

今年も、日本演劇協会理事の嶋田親一先生と共に、「映像」部門の審査委員を務めさせていただきました。

受賞作について書いた講評は、以下の通りです。

受賞した自治体の皆さん、おめでとうございます!


平成27年全国広報コンクール「映像」部門

<審査を終えて>
新たな技術を導入した、広報映像の新たな展開
近年、広報映像の発信方法が多様化している。番組やビデオの形だけでなく、ネットの活用が当たり前になってきた。そして今年、さらに新たな技術の応用が加わった。拡張現実、いわゆるAR(Augmented Reality)技術だ。

すでに馴染みのある仮想現実、ヴァーチャル・リアリティ(VR)は、コンピュータによる五感への働きかけによって、人工的な現実感をつくり出す。

一方、拡張現実(AR)は、現実のコンテンツに、現実にはない情報を付加することでインパクトを与える。いわば現実の一部を改変するわけで、具体的には目の前にある現実空間に、デジタル情報を重ね合わせて表示するのだ。

今年入選した埼玉県三芳町の例では、広報誌の写真や絵に、スマホやタブレット端末をかざすと、映像と音声が流れてくる。しかも、AR技術を活用したその映像は、動画による「手話講座」だ。

また同町では、「広報みよし」の印刷以外、つまり動画撮影や編集をはじめARにかかわるすべての作業(取材、写真撮影、デザインレイアウトなど)を、外部委託ではなく、職員が行っている。それにより、AR導入費、運営費用は0円だという。

もちろん、他の市町村がそのまま踏襲することは出来ないかもしれない。だが、すでにこうした先進的な広報の取り組みが行われていることは、しっかりと認識しておきたい。


<受賞作講評>
■特選  
 新潟県燕市 「もっと!ギュッと! つばめっ子ニュース」

まず、「子ども版広報」というトライに好感が持てた。複数のチームが、広報の企画から取材、執筆、レイアウトまでを行う取り組みは、子どもたちが自分たちの暮らす地域をより知るために大変有効だ。またメディアリテラシー教育としても有意義である。しかも出来上がった広報が、いずれも素晴らしい。番組全体の完成度も高く、審査会では、「志」を感じさせる自主制作として高く評価された。

■入選1席  
 広島県東広島市 「ひとくふう発見伝 元就。東広島外伝~東広島、イマドキの教育事情」

最近、連続で選ばれている「ひとくふう発見伝」。キャラクターも上手に使いながら、楽しく、分かりやすく伝えようとする努力の成果だ。今回の「一校一和文化学習」に関しても、飽きさせない見せ方、構成を工夫している。教育は教室の中だけで行われるものではない。見事な組曲「西条」はもちろん、神楽の伝承といった地道な取り組みが、いかに重要なことかを痛感。番組には一本筋が通った迫力がある。

■入選2席  
 埼玉県三芳町 「日本手話で広げよう心の輪 ARで学ぶ 日本手話」

AR(Augmented Reality)という新たな技術を、他の地域に先駆けて広報に活用している。広報誌にスマートフォンをかざすことで動画がスタートするのだ。その動画が、「今月覚えてほしい日本手話」という企画である点も秀逸。紙媒体での図解などでは伝えきれないニュアンスも、動画なら、より分かりやすく伝えることができる。全体が軽快で明るく、楽しい映像であることも評価された。

■入選3席  
 北海道愛別町 「未来への約束~愛ある花火と君の椅子~」

「ハッピーボーン」という取り組みを1990年から続け、これまでに3000人の赤ちゃん誕生を祝ってきた愛別町。花火、地元の材料を使った「君の椅子」、お米などのプレゼントが微笑ましい。町があって人がいるのではなく、人がいてこそ町がある。だからこそ子供は“みんなの宝”であり、その意識を、あらためて共有するかのような内容だ。「開拓120周年」にふさわしい映像作品になっていた。

■入選  
 茨城県石岡市 「石岡めぐり」 

ユーチューブで見ることのできる、約2分半の作品だ。地元の四季を軸とした美しい映像、丁寧な編集、ナレーションなし、静かなBGMといった総合力で、短いながらも町の雰囲気が十分に伝わってくる。いわばプロモーションビデオとして、よく出来ていた。一方、短いだけに、見せたいものだけを並べている、イメージだけを植え付けようとしている、やや独善的ではないか、という指摘もあったことを明記しておく。

■入選  
 富山県立山町 「立山かんじき-雪山に息づく伝統の技-」

伝統の技としての「かんじき作り」を、実に丹念に見せていた。この作品自体が貴重な記録であり、伝統文化の継承として意義のある取り組みだ。また、ただ一人となった職人のことを思うと、広報側のこうした姿勢が、今こそ必要なものであると分かる。ただし、この内容で30分を超す長さは、見る側が途中でダレてしまう恐れがある。もう少し凝縮してもよかったのではないか。

■入選 
 京都府京丹波町 「家族の愛で はぐくむ命」

自主制作番組として、3年連続の入選となる。基本的に密着ドキュメンタリーというスタイルは今回も変わらない。ある“子育て家族”が描かれている。取材者と取材対象の距離感も適切だ。支援イベントに参加する様子や自宅での日常は、見る側が家族や命について考えるきっかけとなる。とはいえ終盤になると、やや冗長な印象は拭えない。30分の番組枠ということで仕方ないが、刈り込めば、もっと良い作品になる。

■入選 
 兵庫県西宮市 「まるごと市政「本ってすごい 本ってたのしい」~西宮市立図書館の取り組み~」

今、全国各地の公立図書館が注目されている。単に本を所蔵し、閲覧や貸し出しだけを行っていた時代とは異なり、オリジナルな取り組みが展開されているからだ。西宮市の出張ブックトークやビブリオバトルもその一つと言える。映像では、コント風の説明も入れるなどの工夫がなされ、望遠レンズを使ったインタビューも効果的。何より、見ていると、図書館に行きたくなることが最大の功績だ。

■入選 
 福岡県北九州市 「開け!キタキュウ人図鑑~創業75周年 小倉昭和館の3代目 樋口智巳さん」

「自分たちの地元に、こんな人がいるのか」という発見、再発見が楽しい番組だ。今回は、創業75周年を迎えた映画館の3代目となる女性館主。どんなことをしているのか。そしてどんな人なのか。人間像も鮮明で、人物ドキュメンタリーとして優れている。しかも、これが2分半の長さであることに驚く。映像も編集もしっかりしており、見ごたえがあった。短い作品ならではのインパクトがあり、自治体の姿も見えてくる。

(月刊「広報」 2015年6月号)


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