朝日新聞に、超人気の動画サイト「ザ★がっちゃんねる」についての記事が掲載されました。
この記事の中で、コメントしています。
がっちゃん動画、幼児わしづかみ
普通の6歳の日常、再生2億回
「がっちゃん」という6歳の男の子の動画が、幼い子どもの間で人気を集めている。
動画サイトでは、国民的アイドルや大流行アニメとも肩を並べる。なぜヒットしているのか。
男の子が居間で新品ミニカーの箱を開ける。「あ、清掃車」「欲しかったやつだ!」と拍手したり、歌ったり。机で1分ほど遊び、終わる。それだけ。人気番組「はじめてのおつかい」(日本テレビ系)のような冒険も試練もない。
しかし、この7分の動画が昨年1月にユーチューブに投稿されると、1240万回再生された。AKB48の「真夏のSounds good!」(1548万回)やアニメ「妖怪ウォッチ」の「ゲラゲラポーのうた」(970万回)の動画に匹敵する。
都内に住む男の子の愛称は、がっちゃん。家族の意向で本名は非公開だ。デザイン会社を経営する父(34)が2年半で300本以上をスマホで撮影し投稿。握手会で戦隊ヒーローと無言で握手したり、ひたすら自転車で走り回ったりと日常風景の動画ばかりだが、総再生回数は2億回を超える。
好きな電車のおもちゃを紹介する動画を1歳からユーチューブで見ていた。3歳で「僕も映りたい」と直訴。「プライベートを見せるなんて」と渋る母を父が説得した。「やりたいようにやらせたかった。誰も見ないとも思ったし」
気が乗った時にやりたいことだけをするのがルールで、親は指示しない。子どものファンが多いので「乱暴な言葉遣いだけ注意する」というが、人気の理由は「今でも分からない」が父の本音だ。
投稿動画には「子どもがまねする」というコメントが寄せられ、ユーチューブにはがっちゃんをまねて鉄道のおもちゃやミニカーで遊ぶ子どもの動画もある。
恵泉女学園大の大日向雅美教授(発達心理学)によると、まねをするのは「モデリング」と呼ばれ、他人の行動を取り込む、発達の重要な過程という。「少し年長のお兄さんお姉さんは、幼児にとって特に基準にしやすい」
東京都練馬区の主婦木崎悠紀さん(24)と長男の光悠(あきひさ)君(2)は親子でファン。「周りの男の子はみんな知っている」そうだ。
電車やバスの中で光悠君がねだるとスマホで一緒に見たり、家事の間に見せたり。「見すぎはよくないけど子どもが静かになる。言葉遣いも丁寧で安心。自然体で楽しそう」
上智大の碓井広義教授(メディア論)は「思惑や狙いがあるプロのコンテンツとは対極。作り物でないことが、子どもや親の琴線に触れたのだろう」。
■スマホ「寝る前は控えて」
子どもと動画の距離は縮まっている。
情報サイト「ママスタジアム」を運営するインタースペースは昨年約600人にアンケートをした。「子どもがスマホを利用する」と答えたのは2~6歳の各年齢で8~9割、1歳でも74%。最も多い利用方法は「動画」で56%だった。
日本小児科医会は2013年末に「赤ちゃんの育ちをゆがめる可能性がある」として、「スマホに子守りをさせないで!」と訴えるポスターを配った。今年5月にはリーフレット計25万枚を増刷。内海裕美常任理事は「動画は見始めたら止まらない。親子が触れ合う時間を奪う」と心配する。
しかし、成長や発達への影響を示す具体的なデータは、実はまだない。
中央大の山口真美教授(認知心理学)は「生活からスマホを排除するのは今や無理」と指摘。「時間を区切り、親と一緒に見るなど使いこなす工夫をすべきだ」と話す。
ただ、眠る前は注意が必要だ。兵庫県立子どもの睡眠と発達医療センターの中井昭夫医師によると、就寝前にスマホやテレビの画面を見ると、ブルーライトが睡眠調節ホルモンの分泌を抑え、動画やゲームは内容によっては良質な眠りを妨げるという。「体内時計が狂い睡眠障害になると成長や発達に悪影響がある。寝る前のスマホは控えるべきだ」と注意を促す。(後藤遼太)
(朝日新聞 2015.07.09)