読売新聞に掲載された、民放BSの報道番組に関する特集記事で、解説しています。
民放BS 報道番組を強化
民放BS局の報道番組の競争が激しくなっている。今秋にはBS日テレの「深層NEWS」が内容を刷新、BS―TBSも新番組を開始する。地上波放送よりも「分かりやすく」「より詳しく」、「ニュースの裏側」を詳報するのが、BS報道番組の特徴だ。(市原尚士)
BS日テレ 分かりやすく
BS日テレの「深層NEWS」(月~金曜後10・00)は10月で放送3年目を迎える。より多くの視聴者を獲得するために、「分かりやすさ」をキーワードにして番組を一部刷新する予定だ。
番組の中で、フリップなどをこれまで以上に活用し、ニュースの「見せ方」に工夫を凝らすほか、放送中に視聴者からの意見をメールで募集したり、番組に対するツイッターを画面表示したりすることで、視聴者とのコミュニケーションを重視する。
また、この番組の「売り物」は、ゲストを呼んで時事問題を徹底討論することだが、今後はテーマによっては、「トレンドの発掘」的な傾向ものの紹介や、有識者によるニュース解説も導入する予定だ。
番組が始まった当初は60歳代が中心だった視聴者層も、「最近では40歳代や50歳代が増え、テーマによっては20歳代からの意見も寄せられるようになった」とBS日テレ報道局。今後はさらに幅広い視聴者の獲得を目指すという。
BS―TBS 外国人の視点で
これに対して、BS―TBSが7日から始める新番組が「外国人記者は見た!日本inザ・ワールド」(水曜後10・00)だ。お笑い芸人のパトリック・ハーランらを司会に据えて、外国人特派員協会に所属するジャーナリストがニュースを分析する国際派の番組だ。
「日本人の良い点も悪い点も、忌憚(きたん)なく冷静に伝えてくれる海外特派員の目線が、日本には必要」というのは、笠原啓プロデューサー。日本人には思いもよらない論点・視点でニュースを斬ることに期待するという。
BS11の「報道ライブ21 INsideOUT」(月~木曜後9・00)は、10月からスポーツなどを強化する予定だ。
課題発見や議論重要に
2009年にBSフジが「プライムニュース」(月~金曜後8・00)をスタートさせたのをきっかけに、民放BS局では、次々と報道番組が生まれてきた。
10年秋にはBS朝日が「いま世界は」(日曜後6・54)を開始。13年春には、BSジャパン「日経プラス10」(月~金曜後10・00)、BS―TBS「週刊BS―TBS報道部」(日曜後9・00)がスタート。この番組は15年春に終了したが、「週刊報道Bizストリート」(土曜後9・00)、「週刊報道LIFE」(日曜後9・00)が始まっている。
BS日テレが「深層NEWS」を始めたのは13年秋。これで民放キー局系のBS局で、報道番組が出そろった。07年開始の「本格報道 INsideOUT」は14年春、「報道ライブ21 INsideOUT」になった。
これらBSの報道番組は、地上波に比べ、ひとつのテーマを掘り下げて解説・討論するのが特徴だ。「『毎日2時間の特番を作る』つもりで臨んでいる」とBSフジの高島英弥報道局長はいう。
地上波に比べ、年齢層が高いといわれるBSの視聴者には、じっくりと詳しくニュースを伝えてほしい、というニーズがある。さらに、15年春からは、民放BS局の“視聴率”にあたる「BSパワー調査」が視聴者が記録したものを回収する日記式から自動的にデータが蓄積される機械式へと切り替わり、BS放送全体への注目度も高まっている。
これらを背景にして、より深く、分かりやすい報道番組が、BSで求められているのだ。
上智大の碓井広義教授(メディア論)は「課題発見、掘り下げ、議論というBS報道の長所をより意識した番組作りがこれまで以上に必要になる。それができなければ、BSは単なる“第二の地上波”になってしまう可能性もある」と話している。
(読売新聞 2015.09.30)