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NHK「同時配信」実験をめぐって

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東京新聞に、NHK「同時配信」実験に関する特集記事が掲載されました。

この記事の中で、コメントしています。


NHK TVと同時配信実験
ネット有料視聴 現実味
NHKが総合テレビの番組を放送と同時にインターネットで配信する実験を始めた。籾井勝人(もみいかつと)会長は「海外では行われている。日本でもそういう時がくる」と必要性を強調する。パソコンやスマートフォンで見るテレビ番組。テレビ視聴だけに課せられてきた受信料が、ネット視聴でも課金される方向が現実味を帯びている。(東京放送芸能部・鈴木学)

■インフラ

実験は十九日に始まり、契約者から募集した約一万人を対象に約一カ月間実施する。一日最大十六時間、首都圏向けの番組をネットで同時配信する。参加者はIDとパスワードを打ち込み、ネットを通じて視聴する。

これまでの同時配信は、主に住民の生命に関わる災害報道だった。昨年の放送法改正で、NHKがネット配信できる範囲が「(既に)放送した」番組から「放送する」番組へと広がったため、本格的に乗り出すことが可能になった。

NHK放送文化研究所の今年の調査では、最も欠かせないメディアにネットを挙げたのが二十代で54%、三十代で47%。テレビ離れがいわれる若い世代を引きつけるため、放送局にとってネット対応は課題だ。

上智大の碓井広義教授(メディア論)は「ネットは今や社会インフラ。『あまねく日本全国において受信できるように』(放送法第一五条)という使命を負うNHKとしては、受信料を払えばどこでも番組が見られる環境をつくるべきだと思う」と話す。

■ただ見

六千億円を超える年間の受信料収入を元手に、NHKがネットの同時配信に本腰を入れ始めたことに、民放は警戒感を強めている。

ネットの同時配信の動きが広がれば、テレビ放送の広告収入で成り立っている民放のビジネスを圧迫しかねない。テレビ朝日の吉田慎一社長は九月の記者会見で、これまでの日本民間放送連盟の見解を踏襲し「現段階での同時配信は限定的で」とくぎを刺した。

NHKの受信料はテレビの設置を前提に徴収されているので、現在、ネット配信は原則無料。今回のNHKの実験費用は受信料収入で賄われる。自民党の小委員会が受信料支払いの義務化を検討するよう総務省とNHKに提言したが、ネット配信が本格化すれば、受信料の公平負担という点からネットだけの「ただ見」が大きな問題となってくる。

■ビジネス

実験は視聴ニーズ、端末の動作や画質などの技術的課題を検証。来年二月をめどに結果を公表し、二〇一六年度も続ける。これとは別にスポーツイベントを数件、人数を限定せずに同時配信する実験も予定している。

ネット利用に慎重な芸能事務所もあるため、出演者らから配信への同意を得るのが不可欠。アクセスが集中してもダウンしないシステムを整備する必要もある。民放が同時配信を様子見しているのは、ビジネスとして成り立つかどうか不透明なためとみられる。

「場所を選ばず、見られるようにすべきだ」との意見がある一方、立教大の砂川浩慶准教授(メディア論)は「赤字でもやるべきなのか、素材だけを提供して管理はサイト運営の事業者にしてもらうことができるかなど、論点は多岐にわたる」と指摘。「受信料に関わる問題であり、NHKはどこまで情報提供を行うべきかを徹底して議論する必要がある」と話している。

<NHKの受信料>
放送法に基づき、放送を受信できるテレビの設置者を対象に、NHKが受信契約を結んだ上で世帯ごとに徴収する。現在は地上契約が月千二百六十円(口座引き落としなど)、衛星契約を含むと月二千二百三十円(同)。受信料を支払わないのは違法だが、罰則規定はない。ネットの受信料が徴収されることになった場合、現在の二本立て料金が三本立てになるのか、全てをまとめて受信料を一本化するのか。複数の考え方があり、今のところ不明だ。

(東京新聞 2015.10.25)


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