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週刊プレイボーイで、「犯罪報道とオタク」についてコメント

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「犯人は○○オタクでした」の30年史!
「女子高生アニメに熱中…寺内容疑者の素顔同級生語る」

こんな見出しの記事が、3月29日付けの『日刊スポーツ』に掲載された。女子中学生を誘拐し、2年半に渡って監禁した容疑で逮捕された寺内樺風(かぶ)容疑者(23)について、高校時代の友人に取材して得た情報をもとに書かれた記事だ。

この「女子高生アニメ」とは、2005年に深夜帯で放送された『涼宮ハルヒの憂鬱』のこと。事件との因果関係は見あたらないが、あたかもこのアニメが「犯行の原因」とさえ取られてもおかしくない見出しだ。

過去にも、異常犯罪が起こった際にマンガやアニメ、ゲームといった〝オタク文化〟と犯人を結びつける報道は何度もあった。今回は、その歴史を辿ってみたい。

〝萌え〟でオタク犯罪の報道が増加?

メディア論が専門の上智大学の碓井広義教授は、オタクと犯罪を結び付ける報道について、こう分析する。

「世間の人々にとっては、犯人像がわからないことが一番、不気味で怖いことなんです。『異常な趣味を持っている人間だから異常な犯罪をしたんだ』と納得したい。そんな読者の欲求に応えて、メディアはこんな報道をするんでしょう。

特に、オタク・サブカル系の趣味趣向は、非常に使い勝手のいいネタになる。今回の事件に関しても、『かわいい女の子が出てくるアニメが好きだったから、かわいい女の子を誘拐した』と書けば、納得しやすいじゃないですか。加えて、具体的なタイトルや、特殊な設定を記事に盛り込めるオタク系コンテンツは、メディアにとって大変都合がいいはずです」(碓井氏)

こうした「オタクによる犯罪」でまず思い浮かぶのは、88年に起こった「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」だ。犯人の宮崎勤が、特撮やアニメのビデオを所有していたことから、メディアは彼の趣味趣向をクローズアップし、「オタク」という言葉を広めた。

ただ、異常犯罪に詳しい評論家の唐沢俊一氏は、「オタク文化に限らず、フィクションと犯罪を結びつける風潮は昔からあった」と指摘する。

「19世紀のアメリカで『アンクル・トムの小屋』という小説が出版されました。この作品には、黒人が白人に拷問を受けるというシーンがあるのですが、それに影響された白人が実際に黒人に暴力を働く、という事件が多発しました。また、1950年代には、コミックから暴力やセックスシーンを排除しようという運動もアメリカでは起きています。私はフィクションと犯罪に明確な関連性はないと考えているのですが、いまだにどこの国でも『小説やコミックが悪影響を与えている』という声は根強いです」

確かに日本でも、68年に連載開始された永井豪氏のマンガ『ハレンチ学園』が、「有害コミック」だとして非難された。宮崎事件の前から、アニメやマンガは槍玉に挙げられやすかったのだ。

しかし、特に犯罪報道でオタク文化が関連付けられることが増えたのは、2000年頃からだと唐沢氏は言う。

「その頃から『萌え』という言葉がメディアに登場しました。特に『萌えアニメ』や『萌えゲーム』とされたものの多くが、未成年の少女との恋愛やセックスを描いたものであったことから、『萌え』、ひいてはオタク文化が異常な性と結びついて語られるようになった。そうしたイメージから、特に少女を対象にした性犯罪が起きた際、『犯人は◯◯オタク』式の報道がされやすくなったんです」

「萌え~」という言葉は、05年の流行語大賞にも選ばれている。皮肉にもオタク文化が世間に認知されるに従って、事件報道でも「オタク」という単語が頻出するようになったのだ。

憂慮すべきは海外での報道

朝日新聞でアニメやマンガに関する記事を手がける小原篤記者は、メディアにおけるオタク文化の扱いの変化を語る。

「オタク文化に対するメディアの空気が変わったのは、97年です。その年、宮駿監督のアニメ映画『もののけ姫』がベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版第一作も公開された。一方、テレビアニメ『ポケットモンスター』を見ていた子どもたちが次々と発作を起こし、〝ポケモンショック〟と騒がれるなど、よくも悪くもアニメというものの存在感が増しました。これによって『オタク文化は社会的影響力を持ちうる』ことに大手メディアも気づき、以後、朝日新聞など各紙でオタク文化を紹介するような連載も始まりました。

10年代からはアニメやコミックの舞台になった地をファンが訪れる〝聖地巡礼〟や、作品とタイアップした町おこしの活動がクローズアップされるなど、経済面でアニメなどが取り上げられる機会が増えたこともあってか、オタクへの偏見は小さくなり、作品と犯罪を安易に結びつける報道はさすがに減ったように感じます。

私が今、憂慮しているのは、海外メディアの動向です。日本のオタク文化をネガティブにとらえた報道が相次いでいるようです。昨年も、シリア難民を揶揄した日本のマンガ家のイラストが各国のメディアで非難を浴びました。それ自体は非難されてもおかしくない作品でしたが、英BBCなどの海外メディアの騒ぎ方を見ていると、その根底に『オタク文化への偏見もあるのではないか』心配させられます」(小原氏)

海外では、“日本のマンガやアニメ=暴力とセックス“という偏見も根強いという。もし今後、オタク趣味を持つ日本人が海外で犯罪を犯したら……。「Mangaに影響されたOtakuが犯行」と、世界中で報道されてもおかしくない。

(週刊プレイボーイ 2016.04.25号)



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