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Channel: 碓井広義ブログ
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“あの時代”が描かれた、映画「少年H」

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日比谷の東宝本社・試写室で、映画「少年H」。

普段、映画は試写ではなく、1800円を支払って映画館で観ます。

しかし今回は、「金曜オトナイト」のゲストが妹尾河童さんで、この映画のことが話題になるため、収録前に観ておく必要があったのです。

で、ひと言で表現するなら、「真摯な1本」だと思いました。

作品全体も、また降旗康男監督をはじめこの作品に携わった人たちも皆、真摯である、と。

原作にかなり忠実であり、妹尾さんが「“あの時代”を撮って欲しい」と希望した、まさに“あの時代”がスクリーンの中にありました。

徐々に、じわじわと戦時色が強まっていく街と人。

国民服、出征、特高、共産主義者、隣組、ユダヤ人、軍事教練、
空襲・・・・

昭和5年生まれの少年が、敗戦を迎える昭和20年までに、故郷の神戸で体験したことのあれこれが、奇をてらった誇張をせず、一つ一つ丁寧に描かれていました。

脚本は、「ALLWAYS 三丁目の夕日」「探偵はBARにいる」「鈴木先生」の古沢(こさわ)良太さんです。


少年Hこと肇くん(これが妹尾さん)はもちろんですが、強い印象を残すのが、水谷豊が演じるお父さんです。

世の中や人間を自分の目で見て、判断し、行動しています。

あの時代、そういう生き方は時流や風に逆らうことになったりもするのですが、あのお父さんは、主義や理屈に従うというより、自らの皮膚感覚に正直だったのだと思います。

目に見える形で、時流に逆らうのではなく、現実との折り合いもつけつつ、自分の中の大切な部分は誰にも知られずに守り通す。

いろんな意味で、お父さんは、少年Hに大きな影響を与えているのです。

「この戦争は、いつか終わる。
 そのとき、恥ずかしい人間になっとったら、あかんよ」


この映画、ぜひ若い人たちに観て欲しいなあ、と思いながら、試写室を出ました。

公開は今週末、8月10日(土)です。

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