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Channel: 碓井広義ブログ
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週刊新潮で、「日本初のネット限定制作発表」についてコメント

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大看板「月9」の制作発表を
ネット配信した「フジテレビ」大迷走
かつて無敵の黄金時代を誇ったフジテレビだが、今年の黄金週間は煌(きら)びやかというわけにはいかなかった……。視聴率低迷の苦境から抜け出せない同局は5月1日、7月から始まる「月9」ドラマの制作発表をネット限定で生配信する「奇策」に打って出た。しかし、その評判は黄金のように輝くどころか、くすんだものとなってしまったのだ。

 ***

通常、新しいドラマの制作発表は、放送開始数日前にホテルの宴会場などを借りて記者会見の形で行われる。ところが今回、フジは5月1日の未明に突如、同日の午後7時からネットのみで月9『好きな人がいること』の制作発表を行うと告知したのである。

「日本初との触れ込みのネット限定制作発表を注目して観たんですが……」

と振り返るのは、スポーツ紙の芸能記者だ。

「主演の桐谷美玲ら4人のキャストが、自分たちが若い男女の『四角関係』を演じるといったごく簡単なストーリーを説明した程度で、内容が煮詰まっていない印象が際立ち拍子抜けでした。なにしろ台本もまだ完成していないそうですから」

こうした「拙策」の背景を記者氏が続ける。

「現在放送されている福山雅治主演の月9『ラヴソング』の第4話までの平均視聴率は、これまでの月9平均視聴率の最低記録である9・7%を下回る9・4%の体たらく。全日視聴率でテレビ東京に抜かれることもあるフジの低迷ぶりを象徴しています。これを受けて亀山千広社長が、『今までにやったことのないことをやってくれ』と檄を飛ばした結果、今回のネット制作発表になったそうです」

■「時代を逆走」

『フジテレビはなぜ凋落したのか』(新潮新書)の著者で、同局元プロデューサーの吉野嘉高氏はこんな評価を下す。

「おそらく、このドラマは10代、20代をメインターゲットにしていて、それゆえに若者に向けてネット限定制作発表を行ったのでしょう。でもこの世代は最もテレビを観ていません。そんな狭いターゲットに絞ってボールを投げても視聴率は上がりにくいはずです。自分たちでストライクゾーンを小さくしておいて、そこにコントロールが利いていないボールを投げているようなものです」

なぜ、このようなことが起きてしまうのか。

「若々しいイメージで成功した80年代、90年代の黄金期のフジに戻りたいのでしょうか。しかし、これは時代を逆走しているように思えます。社会状況を細かく観察してみればキラキラしていた“あの時代”に戻れないのは明らかです。この分だと、しばらく『迷走フジテレビ』が続くのではないでしょうか」(同)

上智大学の碓井広義教授(メディア論)も手厳しい。

「数字を捨ててやりたいことをやろうといった考え方もあるかもしれませんが、今一番、視聴率を大事に考えなければいけないはずなのがフジです。自分たちが置かれている状況を客観視できていない。これこそフジがここまでダメになった一番の原因だと思います」

フジの企業広報部は、7月からの月9について、「放送をご覧になって判断して頂きたいと思います」と強気だが、

「果たしてどれだけの人に月9を『観る』という入口に立ってもらえるか。そもそも、フジそのものがあまり観られていないのが現状ですからね」(碓井氏)

もはやフジの低視聴率は不治の病か。

(週刊新潮 2016年5月19日菖蒲月増大号)


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