残暑、お見舞い申し上げます!
「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
川村二郎 『社会人としての言葉の流儀』
東京書館 1512円
著者は元「週刊朝日」編集長。言葉に関して筋金入りの頑固者だ。「生きざま」「こだわり」といった言葉を無神経に使うことを戒め、「思う」と「考える」と「感じる」を正確に使い分けることの大切さを教えてくれる。正しい言葉を学ぶ日本語読本。言葉は人なり。
瀧口雅仁 『古典・新作 落語事典』
丸善出版 5184円
新作を含む約700席を収載した画期的な事典。あらすじに続く解説も秀逸だ。たとえば三遊亭圓朝作とされる「死神」では、グリム童話などとの関係を辿る一方で、六代目圓生や十代目柳家小三治、立川志の輔の型にまで言及している。個人で成し遂げた金字塔だ。
小屋一雄 『シニアの品格』
小学館 1620円
対話は哲学的思考の基本だ。本書は59歳のプレシニアと88歳の老人が語り合う設定の人生論。「ひたすら話を聞く」だけで相手が変化していくという視点がユニークだ。「であるべき」に縛られず、「生き続けること」を続けること。読後、心がやわらかくなっている。
(週刊新潮 2016年8月25日秋風月増大号)