「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
大森 望 『現代SF観光局』
河出書房新社 2052円
「SFマガジン」の名物エッセイ10年分である。伊藤計劃「虐殺器官」などの確かな作品評価はもちろん、架空とはいえ「新・世界SF全集」のラインナップも見事だ。また、「10年代日本SFの勢力図」を堂々と語れる人物など他にいない。怒涛のSFツアーに出発だ。
金平茂紀 『抗うニュースキャスター
~TV報道現場からの思考』
かもがわ出版 1944円
著者はTBS「報道特集」のキャスターを務めながら、一人のジャーナリストとして果敢に発言を続けている。本書では政権によるメディアコントロールの実態を明らかにすると同時に、メディア側の無責任ぶりを「自己隷従」として痛烈に批判。その官尊民卑意識を撃つ。
角川春樹、清水 節
『いつかギラギラする日~角川春樹の映画革命』
角川春樹事務所 1620円
映画『犬神家の一族』の公開から40年。製作者・角川春樹も74歳となった。本書は70本にもおよぶ「角川映画」の軌跡をたどり、その意味を探るノンフィクションだ。書籍の販売戦略だった映画製作が、やがて目的を超えた文化運動と化して時代を動かしていく。
菅付雅信 『写真の新しい自由』
玄光社 2160円
専門誌『コマーシャル・フォト』の人気連載「流行写真通信」5年分だ。スマートフォンが高性能カメラ化し、“一億総写真家時代”となった今、写真とは一体何なのか。プロであることは何を意味するのか。「写真についてのジャーナル」として書かれた写真論集。
(週刊新潮 2016年11月17日号)