「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
亀和田 武 『60年代ポップ少年』
小学館 1782円
昭和24年生まれのコラムニストによる60年代回想記だ。小学6年生で聴いた「悲しき60才」にしびれ、以後、ポップ少年として歩む。ビートルズ、SF小説、学生運動、そして女の子。“当時の若者たち”と世代論でくくるわけにはいかない、青春のディテールがある。
町山智浩
『最も危険なアメリカ映画~「國民の創生」 から
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」まで』
集英社インターナショナル 1296円
映画は社会の合わせ鏡だ。テーマや内容は時代や社会を映し出している。たとえ、それが隠されたものであっても。著者は過去のアメリカ映画を検証し、トランプを次期大統領に選んだ国の本質に迫っていく。どの作品も見直したくなること必至。
本城雅人 『紙の城』
講談社 1728円
物語の舞台はIT企業に買収を仕掛けられた新聞社だ。動揺する幹部たち。迷走する親会社のテレビ局。だが、社会部デスクの安芸は仲間と共に戦うことを決める。新聞というメディアの現在とこれからを見据え、ノンフィクションかと思わせる臨場感に満ちた企業小説だ。
井川楊枝 『モザイクの向こう側』
双葉社 1512円
最近、「出演強要問題」で注目されたAV業界。その実情を探るノンフィクションだ。AV女優、男優、スカウトマン、制作者、メーカーなどへのインタビュー取材によって、グレーな危うさに満ちた向こう側の様子が見えてくる。動かしているのは人間の欲望だ。
渡辺将人
『アメリカ政治の壁~利益と理念の狭間で』
岩波新書 929円
オバマ政権は何を成し遂げ、何が出来なかったのか。また、その要因は何なのか。北大大学院准教授の著者は雇用、宗教、外交、移民などにメスを入れ、“米国的リベラル”の本質に迫る。本書が書かれたのは次期大統領が決まる以前だが、今こそ読むべき1冊となった。
(週刊新潮 2016年12月8日号)