「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
酒井順子・高橋 源一郎・内田 樹
『枕草子/方丈記/徒然草 日本文学全集07』
河出書房新社 3024円
古文の教科書とは別物の新鮮な現代語訳だ。酒井本人のエッセイを思わせる枕草子。高橋の小説だと信じてしまいそうな方丈記。「勢いのあるものを当てにしてはならない。強いものからまず滅ぶ」(211段)も、まさに内田の文章だ。古典再読への誘導路となる。
重松 清ほか 『ノスタルジー1972』
講談社 1620円
1972年、札幌五輪で笠谷選手が金メダルを獲得し、連合赤軍のあさま山荘事件が起き、川端康成がガス自殺を遂げ、田中角栄首相が中国を訪問し、NASAのアポロ計画が終了した。6人の作家が描くのは、時代の“節目”をそれと知らず生きていた私たちの姿だ。
コロナ・ブックス編集部:編 『作家のお菓子』
平凡社 1278円
作家たちが愛した酒、住まい、珈琲などが並ぶ「作家シリーズ」の最新刊。谷崎潤一郎は熱海の洋菓子店のリーフパイを常備していた。ナンシー関がテレビを観ながら口に入れていたのは好物のいもようかんだ。その人らしい納得の一品も、意外な逸品も共に味わい深い。
(週刊新潮 2017.01.19号)