「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
大沢在昌 『夜明けまで眠らない』
双葉社 1728円
久しぶりのハードボイルド長編である。主人公の久我は傭兵だった過去をもつタクシー運転手だ。客の体から漂っていた血の匂い。置き忘れていった携帯電話。それを手に入れようとする怪しい者たち。望まずとも再び戦いの渦に巻き込まれていく男がここにいる。
太田和彦 『東京エレジー~居酒屋十二景』
集英社 1620円
田端駅近くの「初恋屋」。浅草の「喜美松」と「ぬる燗」。阿佐ヶ谷の「吟雅」。著者が愛する町と居酒屋が登場する随筆集だ。かつて住んだ場所にまつわる回想の中でも、とりわけ信州・松本で過ごした高校時代の思い出を綴った、書き下ろしの文章が印象に残る。
美内すずえ
「『ガラスの仮面』の舞台裏~連載40周年記念・秘蔵トーク集」
中央公論新社 1404円
連載開始から40年。『ガラスの仮面』は現在も続く長寿漫画だ。本書には過去の対談や座談会が収められている。相手は舞台女優、ミュージシャン、漫画家と多彩だ。「世の中がクールになっても(中略)熱いマヤで突っ走っています」という著者の言葉が頼もしい。
(週刊新潮 2017年2月2日号)