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Channel: 碓井広義ブログ
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朝日新聞で、「なんでも鑑定団」真贋騒動についてコメント

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4点目の「曜変天目」? 
「鑑定団」めぐり論争
テレビ東京系の人気番組「開運!なんでも鑑定団」に出品された焼き物が、世界最高峰の茶碗(ちゃわん)の一つとされる「曜変天目(ようへんてんもく)」の本物と鑑定された。この鑑定結果が波紋を呼んでいる。何があったのか。

「最大の発見」PR

1994年に始まった「鑑定団」は同局の看板番組の一つ。系列局をまたぎ、全国区で視聴できる。一般人や著名人が自慢のお宝を紹介し、ずらりと並んだ鑑定士が本物か偽物か、鑑定額はいくらかを示す。

騒動になっているのは昨年12月20日の放送で、徳島市の男性が出品した茶碗。戦国武将三好長慶の子孫から曽祖父が買い取ったという。和装と「いい仕事してますね」のセリフでおなじみの古美術鑑定家・中島誠之助さんが「曜変は(世界で)たった3点。しかも国宝。今日4点目が確認された」と、2500万円の鑑定額をつけた。

実はテレ東は放送の前、「番組始まって以来 最大の発見!」と題したニュースリリースを出し、「4点目の曜変天目茶碗がスタジオに出現した」などとPR。徳島新聞が1面で報じ、徳島県は文化財指定を視野に調査に乗り出した。

オークション大手では昨年、曜変に次ぐとされる「油滴天目」に約12億円の値がついた。放送後、「安過ぎる」「話にならない」といった投稿がネット上を飛び交い、持ち主は1月、「脅迫めいた声まで届くに至った」と茶碗を外部に出さないと表明。県も調査中断を余儀なくされた。

BPOに審査要請

そもそも曜変天目とは、どんな茶碗なのか。12~13世紀に中国の建窯(けんよう)で作られたとされる。製法が一切伝わっておらず、日本にある3点と中国で発見された陶片のみが確認されている。

曜変を所蔵する静嘉堂(せいかどう)文庫美術館(東京)によると、特徴は、鉄分の多い漆黒のうわぐすりを使っている▽内側を中心に星のような独特の模様が浮かぶ▽模様の周囲には、光線の具合で青や藍色に見える「光彩」があるなど。中国陶磁器に詳しい沖縄県立芸術大の森達也教授は「番組の茶碗にはそれらの特徴が無い」と言う。騒動が収まる気配はない。

所有者は茶碗のうわぐすりの成分分析を旧知の大学教授に依頼。教授は「『偽物なら使われているはず』と指摘された成分はほぼ検出されなかった」とする結論を先月下旬に出した。一方、曜変の再現に20年以上挑む陶工の長江惣吉さん(54)は「画面で見る限り本物とはほど遠い。番組は理由を説明すべきだ」とし、今月2日、放送倫理・番組向上機構(BPO)に番組内容の審査を求めた。

「番組独自の見解」

美術品はどう鑑定されるのか。文化庁や権威ある美術品鑑定所では通常、複数の専門家が検証して価値を見極める。一方、テレビ東京は取材に「鑑定は番組独自の見解。制作過程は一切答えない」とし、放送前の情報漏れを防ぐために中島さんが外部に相談するのを妨げたのではないかと質問すると、否定した。6日までに中島さん側からの回答はない。

上智大学の碓井広義教授(メディア論)は「そもそも鑑定結果は本当なの?というクエスチョンも含めて楽しむ番組だったのに、テレ東のリリースが、社会性の高いニュースにしてしまった。大騒動になっているのにテレ東から視聴者に対して十分な説明がないのは疑問」と話している。(木村尚貴、丸山ひかり、佐藤剛志)

(朝日新聞 2017.03.07)


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