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Channel: 碓井広義ブログ
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週刊朝日で、NHK「ガッテン」の“糖尿病に睡眠薬”問題についてコメント

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NHKが試してバッテン
睡眠薬で血糖値下げる?
NHKの長寿番組「ガッテン!」でバッテンな問題が起こった。2月22日放送の「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」の回で、睡眠薬で血糖値が下がるかのように紹介したのだ。番組では糖尿病患者に睡眠薬を服用させ、血糖値が下がった様子を放送。患者17人中14人で改善したという医師のデータを示し、医師も「薬物は進歩し、こういう薬を使うことで血糖管理が非常によくなる」と話した。

「偶然、番組を見ていたのですが、これは問題になると思いました」

こう話すのは、ヘルスリテラシー(健康・医療情報を読み解く力)に詳しい聖路加国際大学大学院教授の中山和弘氏だ。案の定、医師や薬剤師が素早く反応し、ツイッターなどで指摘。日本睡眠学会などもホームページ上に抗議文を掲載し、番組内で紹介された睡眠薬を販売する製薬企業も、同社の医療関係者専用サイトに「NHKに情報提供は行っていない」「不眠症治療薬であり、糖尿病治療薬としての適応はない」との文を掲載した。番組を見た患者が主治医に睡眠薬の処方を希望するケースも出てきたという。

NHKは番組サイトのなかで謝罪文を掲載し、翌週の番組でも冒頭で3分間にわたって「説明が不十分」「誤解を招いた」などと謝罪。問題は番組の制作側にあると説明した。

上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏はこう述べる。

「あの内容を見たら、『睡眠薬で糖尿病が治るんだ』と思う。皆さんが信頼しているNHKが紹介しているんですから」

医療系の情報番組の監修や企画での相談を受ける機会がある、医師で作家の米山公啓氏は、

「『それはやめたほうがいい』という企画は結構ある。番組側は正論だとおもしろくないから、どうしても極端な内容を紹介したがる。『ガッテン!』は私が知る限り、かつては制作に時間をかけていましたが、現在は粗っぽい作りになっていますね」

碓井氏も「毎回、よくこれだけのネタを探すなと感心していた」と言いつつ、苦言を呈する。

「視聴者には『効くかもしれないし、効かないかもしれない』というグレーな話は受けない。その結果、どうしても言い切りや断定調の番組になりがちですが、視聴者はまさに千差万別、そのやり方が合わない人もいる。それを言い切り型で紹介するのは危険です」

今回、番組に登場した医師は「NHKに聞いてほしい」と取材に応じず、NHKは「内容は検証しているが、公表する予定はない」(広報)という。だが、「再発防止のためには、具体的な改善策について、受信料を支払う視聴者に説明すべき。これを教訓に今後に生かすことが、視聴者のヘルスリテラシーの向上に貢献する」(中山氏)。NHKは事の重大さを認識できているのだろうか。

(週刊朝日 2017年3月17日号)


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