今年もまた、3月11日がめぐってきた。
もう6年なのか、まだ6年なのか・・・。
あの大災害を取り込んだ小説の一つに、相場英雄『共震』(小学館文庫)がある。
事件は東日本大震災から2年後、宮城県東松島市の仮設住宅で起きた。熱心に被災者対応を続けてきた県職員が殺害されたのだ。
大和新聞記者・宮沢賢一郎は驚きつつも取材を開始する。被害者である早坂とは面識があり、その温厚な人柄が印象に残っていたからだ。
一方、警視庁刑事部捜査二課管理官の田名部昭治もまたこの事件に引っ張り込まれる。毒殺された早坂の遺留品であるノートに自分の名前が記されていたのだ。
「震災復興企画部の特命課長」だったという早坂に関する記憶はなかったが、田名部は東北へと向かう。
物語はこの2人の動きと共に進んでいく。被災者たちに慕われていた早坂はなぜ殺されたのか。
その謎を追う過程で明らかになる復興支援の闇。
虚構をはるかに凌駕した、圧倒的な現実を小説に取り込む困難な作業に挑んだ著者の力作長編だ。