日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。
今週は、波瑠主演「あなたのことはそれほど」について書きました。
TBS系「あなたのことはそれほど」
フツーじゃない人物が2人!
今期は「小さな巨人」「警視庁捜査一課9係」「緊急取調室」など刑事ドラマが乱立している。おかげで、逆に目立っているのが不倫ドラマ「あなたのことはそれほど」だ。優しい夫、涼太(東出昌大)との2人暮らしに物足りなさを感じていた美都(波瑠)が、中学時代に憧れていた同級生・有島(鈴木伸之)と出会って不倫関係に陥る。
最大の推進力は、美都が有島との再会を「運命」と感じたことだ。また有島の方も、妻(仲里依紗、好演)が出産を控えて実家に戻っていたという、実にわかりやすい状況だった。これで美都と有島が芸能人や政治家だったら、フツーにゲス不倫報道されるところだ。
だが、このドラマにはフツーじゃない人物が2人いる。1人は東出が演じる涼太だ。妻の浮気に気付きながらも平静を装っていたが、無理だった。
美都はもちろん、有島夫妻に対しても、「知っているぞ」のサインを送り始めたのだ。すでに見る側の興味は、東出の“壊れっぷり”と“追い詰め方”に集中している。
もう1人、注目したいのが美都の実母である悦子(麻生祐未)。世の荒波を乗り越えてきたシングルマザーにしてスナックのママだ。美都に向かって、「あんた、そもそも誰も選んでいなかったのよ。選んだのは自分の幸せ」と言い放つ。そんな娘に春が来た、じゃなくて嵐がやって来た。
(日刊ゲンダイ 2017.05.24)