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週刊新潮で、ドラマ「やすらぎの郷」について解説

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病魔と苦闘の野際陽子、
台詞が覚えられない五月みどり… 
「やすらぎの郷」撮影現場はリアル老人ホーム
押し寄せる年波に抗うことが出来ないのは、往年の大スターたちも例外ではない。老人ホームを舞台にした話題のシニア向け昼のドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)。その撮影現場には、老いを隠さずにありのままの姿を覗かせる、出演者たちの姿があった。

4月から放送がスタートした「やすらぎの郷」は、テレビ業界に貢献した者だけが入居することが出来る無料の老人ホームが舞台。そこに暮らす入居者たちが直面する家族の絆や友情といった、様々な問題をユーモラスに描いた倉本聰(82)の脚本による作品だ。

主人公のシナリオライターを石坂浩二(75)が演じ、彼を振り回す大女優役に、浅丘ルリ子(76)、加賀まりこ(73)、五月みどり(77)、野際陽子(81)、八千草薫(86)といったメンバーが。さらに、石坂とともに、女優たちに翻弄される男性陣として、ミッキー・カーチス(78)、藤竜也(75)……といった豪華キャストが名を連ねる。

石坂は加賀と実際に同棲をしていたし、浅丘とは2000年まで婚姻関係にあった。その3人が共演するという話題性も手伝ってか、放送前から注目を集めていたのだが、始まってみると想像以上に大健闘。最新の平均視聴率は6・3%と、同じ時間帯の中では高数字を挙げ、今なお話題を呼んでいる。

コラムニストの林操氏は、

「ストーリーの随所に出てくる、業界のタブー的な裏話の世界に、世代を超えてついつい引き込まれてしまいますね。現在のドラマが斜陽になった原因は視聴率主義に走ったテレビ局にあるとか、枕営業が行われているといったようなことは、いくらドラマでも、これまでは言えなかったですから」

それをやってのけるのは、倉本作品ならでは。

「でも、やはり、酸いも甘いも知り尽くした高齢の役者さんだからこそ出来たのだと思います。主演の石坂の脇にかつての恋人や妻がいるなんて、若手や中堅の俳優では、到底出来ませんよ。彼らぐらい齢を重ねているから、割り切って遠い思い出として演じることが出来るのではないでしょうか。このドラマからは、役者たちの潔さを感じますね」

と、番組を絶賛するのだ。だが、撮影現場に目を向けると、画面を見て楽しんでいる視聴者とは裏腹に、俳優陣が高齢者ゆえの苦労話も聞こえてくるのである。

テレ朝関係者が言う。

「出演者はほぼ高齢者ですし、放送は半年に及ぶ長丁場。少しでも体調を壊すと、大変なことになりかねませんので、スタッフは出演者に、風邪をひいたりしたらすぐに連絡をするように呼びかけています。さらに、看護師が撮影現場に待機していて、何か起きた時の為に、万全の態勢を取っているのです」

ストーリーさながら、リアル老人ホームのような体調管理が施されているというわけだ。さらに、

「倉本さんの脚本ですから、台詞がとても多いというのも確かにありますが、ミッキー・カーチスさんと五月みどりさんは、記憶力が落ちていて、台詞を覚えられなくて大変だそうです。仕方がなく、カンニングペーパーを用意して撮影したこともありました」(同)

■“あのサプリ”“あの病院”

放送された二人の登場シーンを見ると、確かに五月は石坂との長台詞のシーンでは、棒読みのうえ、時折、目が不自然に泳いでいる。ミッキーも、バーのカウンターに座って語る場面では、台詞を言う前に必ずと言っていいほど、カウンターに目を落とす。まるで、そこに何かがあるかのように……。

もっとも、五月の場合は、オカルト好きの不思議キャラという設定なので、さほど違和感もなければ、ミッキーも棒読みなのに不思議と存在感がたっぷりなのだ。実際のところはどうなのか。

五月のマネージャーは、

「ドラマのレギュラー出演は20年ぶりでして、久しぶりの上に、台詞が覚えられなくて大変でした。出番待ちの時も共演者の方々は、“あのサプリメントがいい”とか“あそこの病院はいいよ”とかで盛り上がっていたようですが、とてもそんな余裕はなかったようです。休憩中も撮影ギリギリまで台詞を覚えるので精一杯。一度くらいは、カンペを見ながら撮ったカットもあったかもしれません」

彼女は、なかなか芝居勘が掴めず、何度も撮り直しをしたため、その日だけでは予定のカットが撮影しきれず、後日改めて撮影日を設けたほどだったという。

他に、こんな話も。先のテレ朝関係者が言う。

「野際さんは、3年前に肺がんを患い、現在も治療を続けています。やはり、体調があまりすぐれないようで、撮影シーンを大幅に減らしたほどです」

それでも、ドラマでは元気にジョギングをする姿を見せるのだから、ベテランならではのプロ意識である。

上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)によれば、

「70代、80代の大スターが、“ああ、歳を取ったな”と視聴者に言われることを承知の上で、あえて自らをさらけ出す。その勇気に見ている側は、心を動かされているんだと思います。人間誰しも歳を取る。ドラマの中の住人たちが抱えている過去への執着や現在への不満、残り火のような恋心、病気や死への恐怖、芸に対する未練など、形こそ違いますが、すべて、我々一般人と共通のものです。このドラマは、超高齢社会の日本のシミュレーションでもあり、だからこそ多くの視聴者が共感しているのではないでしょうか」

ドラマの本番はこれから。この先どんな展開が待っているのか、目が離せない。

(週刊新潮 2017年5月25日号)

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