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Channel: 碓井広義ブログ
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AERA.dotで、小林麻央さんとブログについて解説

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小林麻央が命がけで綴ったブログが示した未来
歌舞伎俳優・市川海老蔵さん(39)の妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんが22日に亡くなった。享年34。2014年10月21日に乳がんの診断を受けてから、2年8カ月の闘病生活だった。

23日午後、海老蔵さんは東京都内で会見を開き、麻央さんが2016年9月から更新していたブログ「KOKORO.」の話題に触れ、「ブログを始めて、同じ病いの人達で苦しんでいる人と悲しみや喜びを分かち合う妻の姿は、人ではないというか、すごい人だなというか」と語った。

麻央さんはブログで闘病を克明に記してきた。

ブログに登録する読者は7カ月で200万人という異例のスピードで増え、すぐにブログランキング1位に。2、3日ぶりに更新した際は、応援する声や同じく闘病中の人からの共感の声が1万件以上寄せられることもあった。

麻央さんが綴り続けたブログが私達に、そして麻央さん自身にもたらしたものはなんだったのか。

芸能界やメディア事情に詳しい智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は語る。

「小林麻央さんのブログを巡る一連の動向は、まさに前例のない出来事だったといえます。幸福の絶頂にあった有名人ががんを告白し、その闘病の過程を綴り続け、亡くなる2日前まで発信していたという事実も然り。また現段階でフォロワー数は258万人にも達し、社会的な関心の高さも過去に類を見ないスケールです」

しかし、これは麻央さんが有名人で人気者だから、というだけの理由ではないという。

「麻央さんがブログを開設した当初、読者のなかには『どんな意図、目的があるのだろう』と興味本位で読んでいた人も少なくないはずです。ブログやSNSで自分の生活を発信する芸能人は大勢いますが、がんのような大変な病気を患ってからブログを開始するというケースはなかなかない。なかには『世間から忘れられるのが怖くて発信しているのではないか』といった邪推をする人がいてもおかしくありません。

しかし、麻央さんが綴る記事を一つひとつ読み進めていくと、ギリギリの状況のなかで発信を続けていること、発信を続けることが麻央さんにとって“生きる証”なのだということが伝わってきます。というのも、麻央さんは文章だけではなく写真も多用し、リアルな生活の様子を伝えていた。それも、体調が良いときも良くないときも、包み隠さずです。そんなブログを読み続けるうちに読者は「生きることとはどういうことなのか」と考えるようになったはずです。そして、当初は"かわいそうな人"のブログというような興味本位だった人々の認識も、“頑張っている人”を見るというものに変わり、熱心な読者になる人や、逆に麻央さんのブログに励まされる人が続出することになったのだと思います」

そして、麻央さん自身も発信を続けることで力を得ていたと碓井氏は指摘する。

「258万フォロワーという途方もない数の人が励まし、見てくれている。この『見てくれてる』という感覚はブログ著者にとって、応援してくれているという感覚に近い。また海老蔵さんが6月23日の会見でもおっしゃっていたように、麻央さんブログは麻央ださんだけではなく、海老蔵さんを始め、家族への励ましにもなっていたのです」

ブログが麻央さんの精神的な支えになりえたのは、その性質に起因するという。

「芸能人が病気をしたりすると、マスコミが追いかけ、憶測でものを書きます。これは世の中から隔絶した状態で闘病する人にとって、多大なストレスになる。芸能人の病気にまつわる報道は、こうしたことの繰り返しでした。

しかし、麻央さんはブログを開始するという選択をすることでこの状況を変えたのです。

ブログを書くということは、第一次情報を芸能人自身が発信しているということ。毎日記者会見をしているようなものです。これによってマスコミは無責任な報道をしなくなり、麻央さんは心を乱されることなく、闘病生活に向き合えたのだと思います。

麻央さんのブログを巡る出来事を一言で総括するならば、闘病という『プロセス』を人々が共有できたということです。普通は、病気をした、克服した、亡くなった、といった『結果』だけが報じられます。私達は日々麻央さんのブログを読むことによって、彼女が何を考え、どう人生に向き合っているかを共有できた。これはブログというメディアの可能性を示唆する出来事でもあります」

(AERA.dot 2017.06.23)

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