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産経ニュースで、「小林麻央さんとブログ」について解説

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【死去から1カ月】
いまも増え続けるブログ読者 
壮絶がん死、
小林麻央さんが私たちに残してくれたもの
歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(39)の妻で、フリーアナウンサーの小林麻央さんが6月22日に34歳の若さで亡くなって1カ月が過ぎた。乳がんと闘いながら「生」を見つめ続けたブログは反響を呼び、読者登録者数は、その死後も増えている。1カ月前は250万人だった読者登録者数は270万人を超えている。麻央さんは、私たちに何を残して旅立ったのだろうか。【文化部 玉崎栄次】

心のうち、包み隠さず

《今、口内炎の痛さより、オレンジの甘酸っぱさが勝る最高な美味(おい)しさ!朝から 笑顔になれます》(「オレンジジュース」)

麻央さんが最後にブログを更新したのは、亡くなる2日前の6月20日。生き生きとした書きぶりで、毎朝、母親がしぼってくれるオレンジの果汁のおいしさをつづっていた。
《皆様にも、今日 笑顔になれることがありますように》

文章は読者へのいたわりの言葉で結ばれた。

麻央さんが「KOKORO.」と題する闘病ブログを書き始めたのは昨年9月。主治医の「がんの陰に隠れないで」との言葉に後押しされてのことだった。夫への感謝、子供への愛情、進行する病状への不安…。ブログでは、妻として、母として、そして1人の女性としての、心のうちを包み隠さず記していた。

家族に支えられ

自身が「ステージ4」であることを告白したのも、ブログ上でだった。昨年10月のことだ。

《前の私なら、言えなかったことも今は言えたりします。私はステージ4だって治したいです!!!》
《だから、堂々と叫びます!5年後も10年後も生きたいのだーっ》(2016年10月3日、「心の声」)

「麻央さんのブログは、それを読んだ多くの人が自身の生き方を振り返り、考え方や行動を見つめ直すきっかけにした。それほどの影響力を、仕事で活躍する様子などではなく、『闘病』を通じて伝えたのは、すごいことだと思う」

女性の生き方アドバイザーとして、悩みを抱える女性やその家族の相談に乗る山脇由貴子さんはこう指摘し、「麻央さんから使命感のようなものを感じた」と語る。

闘病は、ときに自身の弱々しい姿をさらけ出さざるをえなくなることもある。それ故、見られたくないと感じる人も多いだろう。

「しかし、麻央さんは闘病から絶望を感じさせず、明るく前向きに発信した」と山脇さん。

「『強さ』なしにはできなかったこと。そして、家族の愛に支えられたからこそ実現できたのではないだろうか」

励まし、励まされ

もちろん、ときに不安を吐露することもあった。

《家族は皆、「大丈夫だよ」と笑顔でいてくれますが、これからどうなっていくのか不安はつのります》(2017年6月4日、「不安」)
《鏡の前に立ってみると、私が恐れていた姿に近い身体が写っていて、一瞬衝撃を受けたあと、泣いてしまいました》(5月21日、「痩せる」)

麻央さんは、ブログで自身の思いを発信することをどのように考えていたのだろうか。6月9日には、次のような文章を投稿している。乳がんであることが公になって、ちょうど1年となった日の記述だ。

《私は、舵(かじ)をとられて、その後隠れて隠れて真っ暗になったので、新しく舵を取り返しました。それが、ブログでした。今の私の道を作ってくれたブログです》(「6月9日。」)

ブログは麻央さんの心の支えとなっていた。それは同時に、多くの人の心にも響いた。

「生きている喜びに気づかせてくれた」
「麻央さんの思いが原動力になる」

麻央さんの書き込みには、数え切れないコメントが寄せられ、さらに、それが麻央さんを勇気づけることになる。

《皆さまとつながり、本当に励まされていました。いつも》(同)

闘病の「プロセス」発信

ブログは「肉声を伝えるメディア」だ。新聞やテレビなどのように記者や編集者を通さずに、情報の発信者が受け手に直に訴えかけることができる。麻央さんはその可能性の大きさを証明した。

上智大の碓井広義教授(メディア文化論)は次のように指摘する。

「麻央さんはブログで、同じ病気を持つ人やその家族、また生き方に悩みを抱える多くの人たちが、決して孤独ではないことを確かめられる『場』をつくった」

碓井教授によると、有名人の闘病報道はこれまで、病を「克服した」、あるいは「死去した」という「結果」だけが、マスメディアを通じて報じられるのが一般的だった。しかし、麻央さんの場合は、ブログによって、苦しみや喜びなどの生(なま)の声を伴う闘病という「プロセス」が発信され続けた。

「麻央さんが伝え続けたのは『生きる』という意志だった。そして、読者とともに、共感によるゆるやかなコミュニティー(共同体)がつくられたのではないだろうか」

英訳して世界に発信も

今月3日、ブログを運営するサイバーエージェント(東京都渋谷区)が、麻央さんのブログを生前と同じ形で残すことを発表した。文章や写真は残り、コメントも書き込めるという。

「今はまだ読んでいない『未来の読者』にも、麻央さんの体験が手渡されていくのは素晴らしいことだ」と碓井教授は話す。

麻央さんの訃報はBBC(英国放送協会)でも報じられ、ブログの反響などが取り上げられた。英訳も進められており、より多くの人が読むことができるようになっている。

「世界中の私たちと同じように乳がんで苦しんでいらっしゃる方やそのご家族の力に少しでもなれたら」

夫の海老蔵さんは6月30日に自身のブログでこう語り、続けた。

「これもブログを通してまおがやりたかったことかなと思ってます」

(産経ニュース 2017.07.22)

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