「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
松任谷正隆 『松任谷正隆の素(もと)』
光文社 1728円
著者初の自伝エッセイ集だ。少年時代に何を美しいと思い、何を素敵だと感じるか。それは想像以上に人の根幹に触れることかもしれない。ダッフルコート、カメラ、パーカーの万年筆、メガネ、そしてピアノ。若き日に出会った愛すべきモノたちが、少年を松任谷正隆にした。
島田裕巳 『日本の新宗教』
角川選書 1836円
前著『戦後日本の宗教史~天皇制・祖先崇拝・新宗教』(筑摩選書)の続編ともいえる一冊。天理教や大本などの新宗教が並ぶ。特に現在、自民党と日本会議の関係を踏まえて「生長の家」を、また政権与党である公明党の母体「創価学会」を知ることは必須だ。
片山 修 『技術屋の王国~ホンダの不思議力』
東洋経済新報社 2160円
自動車会社のホンダがなぜASIMOのようなロボットやジェット機を作るのか。本書はそんな「ノウハウ・ゼロからの挑戦」の謎を解き明かす。個を生かすという伝統。研究所に生息する奇人、変人、怪人たち。確かに本田技研工業であって本田自動車ではない。
ロバート・S・ボイントン;著、山岡由美:訳
『「招待所」という名の収容所~北朝鮮による拉致の真実』
柏書房 2916円
著者はノンフィクション論が専門のニューヨーク大教授。本書は拉致問題をアメリカ国民に伝えるために書かれた。蓮池薫氏など当事者の証言と、背景となる歴史的経緯を交差させながら日本人拉致の実態を探っていく。膠着状態の今だからこそ、意義のある一冊だ。
(週刊新潮 2017.10.26号)