しんぶん赤旗のリレーコラム「波動」。
今回は、ドラマ「コウノドリ」(TBS系)について書きました。
「チーム医療」の現場力
今期ドラマには、米倉涼子主演「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系)と綾野剛主演「コウノドリ」(TBS系)という2本の「医療ドラマ」が並ぶ。
後者の主人公・鴻鳥サクラ(綾野)は、妊婦の気持ちに寄り添いながら出産をサポートしていく産科医。「妊娠は病気じゃない。でもお産に絶対はない」が信条だ。
確かに妊娠・出産は病気ではない。しかし、さまざまなリスクを伴うことも事実で、産科には日常的に生と死のドラマが共存している。たとえば第5話では、IUFD(子宮内胎児死亡)のつらいエピソードが描かれた。
初めての赤ちゃんを失った夫婦に対し、鴻鳥は原因がわからなかったこと、また事態を予測できなかったことを謝罪する。サクラの同僚である四宮春樹医師(星野源)によれば、「死産の4分の1は原因不明」なのだ。
また第6話では、切迫早産で入院していた若い妊婦(福田麻由子)が、甲状腺クリーゼのために命を落としてしまった。直前に彼女と接していた下屋加江医師(松岡茉優)は、「もっと自分に力があったら」と悔やむ。その後、下屋は「母子の両方を救える産科医になりたい」と決意し、「救命科」へと転科した。
実際、専門医であってもわからないことはあるし、出来ないことも多い。それは当然のことかもしれない。しかし鴻鳥は「当然」にひるんだりせず、むしろ真摯に受けとめ、自分たちに何が出来るかを徹底的に考えていく。
この「自分たち」という点が大事で、このドラマの鴻鳥はいわゆるヒーローではない。産婦人科や新生児科の仲間たち、つまり「チーム」としての取り組みこそが見所だ。大門未知子という一人のスーパー外科医が大活躍する、「ドクターX」との大きな違いでもある。
特に、助産師の小松留美子(吉田羊)の存在が大きい。異なる職種のメディカルスタッフが、お互いに対等の立場で連携して治療やケアと向き合う。このドラマを通じて、視聴者は「チーム医療」の現場を垣間見ることができるのだ。登場人物それぞれに目配りが利いた脚本。リアリティーを大切にした細心の演出。そして役者たちの気合いの入った演技が、この秀作ドラマを支えている。
(しんぶん赤旗 2017.12.18)