放送批評懇談会が発行する専門誌「GALAC(ぎゃらく)」。
おお、表紙がさっしーだ。
なんだか、すごい(笑)
この最新号の「書評欄」に寄稿しました。
丹羽美之・藤田真文:編
『メディアが震えた―テレビ・ラジオと東日本大震災―』
東京大学出版会
今年3月の山田健太「3・11とメディア〜徹底検証 新聞・テレビ・WEBは何をどう伝えたか」(トランスビュー)と本書を併せて、ようやく「震災とメディア」の本格的検証が実現したと言えるのではないか。執筆者は研究者から報道・制作関係者まで。対象は地震・津波報道から原発事故報道まで。またエリアもローカルからグローバルまでと幅広い。
第1部のテレビでは、編者である藤田が行った被災地のローカルテレビ全局への聞き取り調査と、松山秀明(東大大学院)による「報道の地域偏在」に関する分析に注目した。その内容はもちろん、一方はきわめてアナログ的な手法で成果を上げ、もう一方はデジタル・アーカイブ技術を活用している点が興味深い。
第2部はラジオだ。姉帯俊之(IBS岩手放送)や高橋厚(りんごラジオ)の報告からは、安否情報や生活情報をラジオならではのきめ細かさで伝え、被災者を支えた活動の実相が見えてくる。さらに市村元(関西大)が臨時災害放送局の実態と課題に言及している。
第3部の原発事故報道では、大本営発表と批判された原因、放射線の危険にさらされながらの取材、原子力とテレビ・ジャーナリズムの関係史、海外が伝えた原発事故などが明らかになる。「危険地取材への組織的対応が時として集団的な思考停止に陥る」という烏谷昌幸(武蔵大)の指摘が印象に残った。
終章で「今回の震災報道には多くの可能性も宿っていたことを忘れてはならない」と書く編者・丹羽に賛同しつつ、福島中央テレビの佐藤崇が「二年目の福島は、分断と孤立の末、『わからない』ことが『わからない』まま固定され、困難が困難のまま固定されたように思う」と言わざるを得ない現実をメディアは直視する必要がある。
(GALAC 2013年10月号)