トレンド観測
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有料動画配信のオリジナル番組
吉本興業が本腰
一昨年、又吉直樹さんの芥川賞受賞作「火花」の映像化を、米配信大手ネットフリックスと手がけて注目された吉本興業が、“本職”のお笑いでも、有料動画配信向けのオリジナル番組作りに力を入れている。
アマゾン・プライム・ビデオの昨年の視聴者数(アマゾンランキング大賞2017)では、吉本興業が制作した番組がトップ10のうち4番組を占めた。
1位を獲得したのは「ドキュメンタル」。ダウンタウンの松本人志さんが審判役を務め、人気芸人10人が密室で互いを笑わせ合う。
一昨年11月に始まった配信は現在シーズン4まで公開され、2、3作目もトップ10入りを果たした。笑わせ方に規制はなく、中には過激な行動に出る芸人もおり、冒頭には「一部不適切と感じられる場合」に了承を求めるテロップが流れる。3位に入った「戦闘車」は、芸人らが高級車をぶつけ合い戦う激しいアクションが売りだ。
「配信ならめちゃくちゃできるわけではないが、表現の自由度が上がるのは確か」と話すのは、デジタルコンテンツ事業を担当する神夏磯秀(かみがそしゅう)氏。スポンサーの意向や短時間の視聴率変動を気にせず、「1回ボタンを押せば基本的に最後まで見てもらえるので、しっかり構えて作ることができる」と話す。
自主規制が進み、テレビ番組が「窮屈になった」と評される昨今。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は「『臆病なテレビ』に『大胆な動画』という対比で、『ネットでは面白いことをやっているらしい』という気配が漂い始めている」と指摘する。
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番組に所属タレントを出演させるだけでなく、制作にも早くから参加してきた吉本だが、これまでと異なるのは作品の著作権が手元に残ることだ。
「火花」はネットフリックスでの配信後、NHKに販売。「ドキュメンタル」は、番組演出方法などのフォーマットを海外に輸出する準備を進める。関西のお笑い番組が見られる有料動画配信サービス「大阪チャンネル」ではサービス運営にも乗り出すなど、コンテンツを直接供給する手段を広げている。
「『わろてんか』(創業者の吉本せいをモチーフにしたNHK連続テレビ小説)の時代から、吉本にとって面白いものに木戸銭を払うのは当たり前。受け取り手とダイレクトにつながる動画配信事業は親和性が高いのでは」と碓井教授。
事業規模では依然テレビ部門が圧倒的に大きいという同社だが、今後も配信向けに多様なコンテンツを用意しているという。【山田夢留】
(毎日新聞 2018.01.27)