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Channel: 碓井広義ブログ
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オリジナルストーリーで新機軸「アンナチュラル」

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、ドラマ「アンナチュラル」 について書きました。


「アンナチュラル」
主演と脚本家がタッグ 
オリジナルストーリーで新機軸
ドラマのシナリオには2種類ある。一つが小説や漫画など原作があるもの。もう一つがオリジナルだ。本来、前者は「脚色」と呼ばれ、ゼロからストーリーを作り上げた「脚本」とは別扱いなのだが、日本のドラマではどちらも脚本と表示される。

野木亜紀子は、いま波に乗っている脚本家の一人だ。一昨年の「重版出来!」(TBS-HBC)、「逃げるは恥だが役に立つ」(同)で大ブレイクしたが、どちらも漫画が原作だった。そんな野木の新作が「アンナチュラル」(同)で、今回はオリジナル脚本だ。しかも主演は勢いのある石原さとみ。彼女が主人公を演じることを踏まえて書かれた、いわゆる「当て書き」の脚本となっている。

法医解剖医の三澄ミコト(石原)の勤務先は「不自然死究明研究所(UDIラボ)」。警察や自治体が持ち込む遺体を解剖し、死因をつきとめる。科捜研の女ならぬ、UDIラボの女だ。警察官ではないから捜査権はない。ただし調査や検査を徹底的に行う。

第1話の案件は青年の突然死。警察の判断は「虚血性心疾患」(心不全)だったが、検査の結果、心臓には問題がなかった。薬物による急性腎不全の疑いが出てくるが、肝心の毒物が特定できない。そこに遺体の第1発見者で婚約者でもある女性が現れる。しかも彼女の仕事は劇薬毒物製品の開発だったが、この後に予想外の展開が待っていた。

さらに驚かされたのが第3話で、ほぼ全編が法廷劇になっていた。舞台となったのは主婦ブロガー殺人事件の裁判。ミコトは代理の証人として出廷する。被告は被害者の夫(温水洋一)で、妻から精神的に追い詰められたことが動機だという。しかしミコトは証拠である包丁が真の凶器ではないことを法廷で指摘する。被告もまた無実を主張しはじめた。

この回で出色だったのは、最初は検察側の証人として法廷に立ったミコトが、次の裁判では被告側の証人へと転じて検事(吹越満)と戦ったことだ。この意外性たっぷりな展開こそ野木脚本の成果だろう。何よりミステリー性とヒューマンのバランスが絶妙で、テンポは快調だが急ぎ過ぎない語り口が上手い。ま

た役者たちが脚本によく応えている。石原はパワーを自在に調節する堂々の座長ぶり。同僚の一匹狼型解剖医、中堂(井浦新)のキャラクターも際立つ。今後もミコトと中堂のコンビネーションが物語を動かしていくはずで、「不条理な死」を許さないプロたちを描く新感覚のサスペンスとして注目だ。

(北海道新聞 2018年02月06日)


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