「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
新谷尚人 『バー「サンボア」の百年』
白水社 2160円
創業100年を迎える老舗バーの歴史だ。大阪、京都、東京に計14店。ただし支店ではなく、それぞれがサンボアだ。北新地と銀座、浅草で店を営む著者は、飲食店でもバーでもなく、サンボアを生業としていると言う。「バーは人格である」ことの証左かもしれない。
池内 紀 『記憶の海辺~一つの同時代史』
青土社 2592円
77歳のドイツ文学者が自らの軌跡を語る。10歳の朝鮮戦争に始まり、秀才校の劣等生だった高校時代、現地で体感した「プラハの春」、そして60歳で完成したカフカ個人訳まで。あえて「情緒や感傷は一切禁じた」ことで、重層的かつ魅力的な同時代史となった。
平山雄一 『明智小五郎回顧談』
ホーム社 2376円
明智小五郎、自身を語る。生い立ちから一高・帝大時代。後の乱歩、平井太郎との出会い。手がけた数々の事件と二十面相をめぐる驚きのエピソード。読めば明智の肉声が聞こえてくる。大胆かつ魅力的な試みである本書は、乱歩研究の第一人者にしか書けない小説だ。
島田雅彦 『深読み日本文学』
インターナショナル新書 907円
作家であり法政大教授である著者の近代文学講義だ。「自我の体系」を刻み込んだ夏目漱石。「少女文学の教祖」樋口一葉。欲望を作品に昇華した谷崎潤一郎。さらに内村鑑三や新渡戸稲造の日本論・日本人論などをテコに、逆境を生きる力としての文学を再起動する。
(週刊新潮 2018年2月1日号)